あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

2018年版「誰もが泣いて喜ぶ冠婚葬祭その他諸々スピーチ集」第23回

2018-02-22 09:56:50 | Weblog


蝶人狂言綺語輯&バガテル―そんな私のここだけの話op.285



○ 新社屋落成式/社長のあいさつ


本日は山川ガリバー株式会社の新社屋の落成式にご出席賜りましてありがたく厚くお礼申し上げます。
私は、このほど代表取締役社長に就任いたしました山川啓一郎と申します。どうぞよろしくお見知りおきのほどお願いいたします。

*1弊社は創業以来日本有数の化学メーカーとして堅実な成長を遂げてまいりましたが、昨今の科学技術のグローバルな発展に対応すべく、昨年米国ベンチャー企業の雄ガリバー社との技術提携に踏み切り、同社の資本参加を求めました。

*2のちほど弊社会長に就任いたしましたダニエル・ジョンソンより、皆さまにご挨拶させて頂きますので、どうかよろしくお願い致します。
さて、このたび大星建設様の格別の御尽力のもとで2年の工期、35億の工費を投じて本日完成いたしました弊社新社屋は、通常の本社機能に加えまして最近巷で話題となっております「バイオマス化学工場」を併設しております。

*3バイオマスとは、生ゴミや農産物、食品廃棄物、家畜の排泄物など、いわゆる生物資源の総称でありますが、弊社では、本工場にて、米国ガリバー社が所有する遺伝子組み替え微生物の開発、生産、応用技術を駆使しまして、籾殻、油かす、わら、廃木材などの植物資源を効率的に発酵させ、エチルアルコールなどの食用・工業用アルコール類を高速低コストにて生産する計画であります。

すでに2003年には、わが国におけるアルコール販売は全面自由化となり、アルコールを自動車燃料に混入する新たなマーケットが欧米を皮切りにグローバルに形成されております。

弊社の新社屋と新規バイオマス工場はそうした新規市場に明確にターゲットを定めたもので、来年度は総額100億円を投入し、中国の上海にも弊社支店とバイオマス化学工場を新設しまして、石油石炭、原子力に替わる新規エネルギー源を鋭意開発してゆく所存です。

本日ご列席の皆さまには釈迦に説法でございますが、*4最近の世界の科学技術の最先端は、20世紀以来のIT情報科学にバイオテクノロジーを融合したバイオインフォマティックスに向かっております。

そして、この生命情報科学の進化とともに展開される弊社の事業活動が、21世紀の人々の暮らしをより豊かに、より創造的なものに変革することができたならこれほど喜ばしいことはございません。

どうか今後とも宜しくご指導ご鞭撻を賜りますようお願いいたしまして私のご挨拶にかえさせていただきます。


○ アドバイス
* 1 過酷な国際競争の荒波の中で、勝組みをめざすハイテクバイオベンチャー企業の新社屋落成である。
* 2 海外企業と接触したときにはじめて国内企業のグローバル化が生じる。企業と企業の間に「国」の存在が微妙に介在するのである。この会社にとって国際提携先の会長とのコミュニケーションを円滑にはかることもスピーチの重要な目的である。
* 3 廃棄物から多様な物質を作り出すバイオマス工場は、いうならばゴミから宝を再生産する魔法の打ち出の小槌として世界的に注目を集めている。
* 4 山川社長が指摘したITとバイオインフォマティックスにナノテクノロジーを加えた三位一体型で、21世紀の技術は急速な進展を遂げつつある。


     次々に人が死にゆく恐ろしさ次は誰だ私はいつだ 蝶人

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