あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

夢は第2の人生である 第56回

2018-02-23 09:54:35 | Weblog


西暦2017年文月蝶人酔生夢死幾百夜 




最後は私とマムシの決闘だったが、私は彼奴に噛まれないように後ろに回って尻尾をつかみ、石の上に何度も叩きつけたので、とうとう彼奴は私の軍門に下った。7/1

アシダ君はレリアン担当を命じられたが、苦手の婦人服分野なので、どのように取り組んだらいいのか、日夜悩んでいた。7/2

朝の5時だというのに、ごしごしと木を切っているやつがいる。「神様、私を助けてください」という少女の叫びも聞こえる。すると突然蝉が鳴き、ピアノがポロンと鳴った。7/3

悪者に追いかけられてたので「さあ困った、どうしよう?」と検索に打ち込んだら、いきなりイタリアの高級車アルファロメオが、目の前に現れたので、これ幸いと乗り込んで、窮地を脱することができた。7/4

阪神の源五郎丸に似た名投手と仮契約するために、今すぐ130万円が必要なので、すべての財布とポケットを探しまくったのだが、たったの1円すら持ち合わせがなかった。7/5

玄関に人の気配がするので覗いてみると、生協の配達のお兄さんが、しょんぼりと立ち尽くしているので、「どうしたの?」と尋ねると、「このシャケの切り身を注文されましたか?」というので、「いいや」と答えると、がっくりうなだれてしまった。7/6

私は式守伊之助だが、知らない間に土俵の外の砂に大きな足跡がついている。しかしいつ誰が踏み出したのか、さっぱり記憶がないので、頭の中が真っ白になった。7/7

「ホテルにしますか? 旅館にしますか?」と聞かれたので、「朝晩食事はついてるし、畳の上の布団で寝られるし、旅館にきまっとるがな」と答えて、その日は小西屋に泊った。7/8

そのうちに私らのオケは、だんだん地力がついてきたので、オペラ座がガルニエ宮で「トリスタンとイゾルデ」をやる同じ日時に、シャンゼリゼ劇場での公演をぶっつけ、乾坤一擲の勝負に出た。7/9

我が党ではつねに新鮮な新人候補者がプールされているので、選挙のたびに、大量の新人を繰り出すことができました。7/10

どういう訳だか、私はW社に二重採用されていたので、ある時は営業、またある時は企画の席を行ったり来たりして、都合が悪くなると、有休代休を取りまくって、給料も2倍もらっていた。7/11

鎌倉市長になった元ミス鎌倉のヤマモトヨシコは、自分の華麗な恋の遍歴を、市の広報に総天然色24ページで特集して、5万部増刷したので、一部の市民の顰蹙を買った。7/12

昨日ネットで買ったばかりの扇風機が、朝から怒涛のように押し寄せてくるので、甚だ迷惑だ。同じ扇風機を、こんなにたくさん購入した記憶はないのに。7/13

この新聞は、誰かが記事を読んだ途端に消えてしまうので、非常に困る。私は真っ白になったタブロイド紙を持ったまま、あちこち駆けずり回って、読んだ人からその内容を聞き取ろうと試みたのだが、空しかった。7/13

その男は、私がヤマダ電機で予約したレコーダーを勝手に使って、いろいろな番組を予約したり、かと思えば解除したりするので、私はひどく困惑してしまった。7/14

川上から下ってきたその男は、汀の生き倒れ人を見ながら、「誰でも人世にはこういう時がある。きっとあそこから落っこちたのだろう」と、橋の欄干を指差した。7/15

「自閉症は遺伝です」と、そのフランス人は熱く語ってやまないんだが、我が家の自閉症の長男は「なにをいまさら川端やなぎ、なにいううとるねん、ぱあでんねん」と笑い飛ばすだけだった。7/17

20代の私なら、一撃のもとに退治できた夏の蚊であったが、いまでは冬の蚊でさえ叩き潰すことができず、何度も掌が虚しく柏手を打った。7/18

西部戦線で異状があった。私と共に敵情視察に出向いた少年兵のハンスが、敵の狙撃手の1弾を喰らって、即死したのだ。7/19

私はダリル・ハンナの桃色の太腿で、細い首をぎゅうぎゅう絞めあげられ、あまつさえその首を、左右にぎゅぎゅっと捻られたので、思わず「もう勘弁してくらさいな」と泣きを入れたが、ハンナ嬢は知らん顔してる。7/20

私は平家の領地や源氏の領地に居ると、いろいろトラブルが起こるので、そのいずれにも属さない領分を見つけては、そこでぶらぶら遊んでいた。7/21

極寒の地で、人も鳥も犬も飢えていた。私がカメラを上空に向けていると、名も知れぬ黒い鳥が、私のすぐそばに、嘴を下に、ジャックナイフのように突き刺さった。飢えた彼奴は、私の生温かい肉を狙ったのだ。7/22

腰まで積った雪を、切り裂くようにして、家から出てきた女をみつめながら、狼は牙をむいた。私が彼奴にカメラを向けると、彼奴は、私を襲おうか、それとも女を襲おうか迷っていたが、そのまま息絶えた。7/22

昔から非常にださくて凡庸な企画ばかり提出して、物笑いの種になっていた男が、世界を代表する美術展のプロヂューサーに成りあがっているので、私はびっくり仰天した。7/23

半世紀ぶりに訪れたウッドストックは、地球上の他の場所と同じように、草木も土も生物もみかけない、荒れ果てた不毛の地、デッドストックと化していた。7/26

「冒険倶楽部」創刊記念3千号は、記念パーティが既に3回も開かれたにもかかわらず、まだ世に送られず、その代りに「浮草マガジン」や「おろぬき少女」という新雑誌が創刊された。7/27

私は、私に残された人生の末路を知るべく、最新鋭の「人世先取り録画機」を5倍速で早回ししてみたが、灰白色のノイズが忙しく点滅するのみで、その詳細は杳として知れなかった。7/28

私はどういう訳だか、知らない間に友人のブログを乗っ取ってしまい、友人になりすまして、多種多彩な情報を各方面にばらまいていたようだ。7/29

「お前の誕生から死まで、すべての経歴を、この全自動洗濯機に放り込んでおいたのさ」と神様は宣わった。良く見ると、私は、シャツやパンツに混じって溺れかかっていた。7/30

待望の幻の稀覯書を書架に見出し、欣喜雀躍せし余は、その時早く、かの時遅く、そを鷲攫みにして、レジに赴きたりしが、懐中に一銭の持ち合わせなきことを見出したり。7/31


  ああこのCMまたやっているけどこの会社はあんまり好きではないなあ 蝶人



コメント
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