照る日曇る日第1693回
若くて、美人で、感受性が豊かで、教養があって、謙虚で、何事につけても地味で控えめで、そこに彼女がいるだけで一隅がぽっと温かくなるようなヒロイン、ファニーは、読者のみならず大勢の独身男性の心をとらえる。
下巻では問題児のクローフォド兄妹が登場して、ファニーを生き地獄の苦しみに陥れるが、幸か不幸かバートラム一家の2人の娘の不倫や駆け落ちが彼女を救い、いかにもオースティンらしい小春日和のハッピーエンドが、読者の不安を優しく鎮めるのである。
なおこの作品ではシェイクスピアもどきの劇中劇つうか小説内芝居の試みがなされていて興味深いのだが、本書ではその下敷きになっている戯曲「恋人たちの誓い」が付録についていて、これまたとても面白いのである。
5年前は町内総出で雪掻きしたが今朝はだあれも出てこなかった 蝶人