音楽千夜一夜第494回
昔ソニーから出ていた廉価版のCDを、ここ1か月ほどでチビチビ聴きました。
1931年3月6日金曜日のトスカニーニ指揮NYフィルの「運命」から始まって2007年11月17日日曜日のデニス・マツーエフのピアノリサイタルまで、いずれもカーネギーでのライブ演奏ならではの、超スリリングな演奏が楽しめます。
前半は勿論モノラルで途中からステレオになるが録音もソニーなのに極めて優秀です。
因みにNYは、パリ、ロンドンと同様よい音響のハコがない。NYフィルの本拠の旧エイブリー・フイッシャーホールなどは、何回改修工事をしても有楽町の東京国際ホーラム大ホール並みの酷さだったが、ともかくこのカーネギーは、狭いけどほかのホールに比べても音響がいいので知られています。
でもこのホールは、近くを地下鉄が走っていて、おらっちがショルティ指揮のシカゴ響でショスタコを聴いた時にはゴオオという響きが座席に伝わって来たが、この43枚にそういうノイズがないのは不思議だ。
43枚はそれぞれに2度と帰らぬ懐かしい思い出が詰まっていて素敵だけど、やっぱり心に残るのはリヒテルが「熱情」などベートヴェンのソナタを弾いた60年12月23日の物凄い録音、62年4月6日にグレン・グールドがバーンスタインの注釈つきで弾いた「遅い」ブラームスの1番、ホロヴッツがバッハの冒頭で音を外した1965年5月9日のヒストリック・リターンの大演奏会などかな。
後年になってバーンスタインがツィマーマン&イーンフィルでいれた同じ曲はもっともっとテンポが遅くなっていたが、あれはあの時グールドから、ブラームスの神髄を教わったからだろう。
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