あまでうす日記

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主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚葬祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.112」

2022-04-12 13:40:34 | Weblog

西暦2022年弥生蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第402回

 

○銀婚式のお祝いでの本人のスピーチ

今日は私ども夫婦のためにこんな素敵な会を開いて頂きまして、まことにありがとうございます。

 

家内はどうか分かりませんが、夫婦生活25年の銀婚式といわれましても、あまり実感がなくて遠い記憶の底から「光陰矢の如し」とか、「歳月人を待たず」とか古い諺が浮かんでくるくらいです。*1

 

しかし、忘れようとしても忘れられない事件も確かにありました。それは長男の耕のことです。彼は私たちが結婚した翌年に誕生しました。自己の内面を深く耕す人になって欲しいとの願いを込めて「晴耕雨読」の耕から名前をとりました。

 

ところが2歳頃になると他の子供さんとの違いが歴然としてきました。言葉の発達が遅れ、会話ができない。溝の穴や特別な植物や乗物、鉄道ダイヤの数字などへの異常な没頭や強いこだわり。遊びのパターンがいつも同じで変化がない。何時に起きて何時に寝るなどの日常生活のパターンが固定されてそれを変化させようとすると抵抗する、などの異常が強まってきたのです。

 

私たち夫婦はいろいろな病院を訪ねて医師の診断を仰いだところ長男は自閉症という障害でありました。*2

 

皆さんは自閉症と言う言葉を聞くと、ネクラで自宅に引きこもったり、難しい顔をして深刻な悩みにふけったり、自己の内面に閉じこもって心を閉ざす人々のことを連想されるのではないでしょうか。

 

これは人間に誰でもある「自閉的な状態」であって、「自閉症」とは何の関係もありません。

 

自閉症は1943年に米国のカナーという児童精神科医が発見しました。WHO世界保健機構の統計によると2000人に1人の割合で患者が存在します。医学が進んだ現在でも自閉症の原因は解明されていませんが、*3

 

最新の学説では、脳の中枢神経系の器質や機能不全による多様な発達障害とされています。

 

ところが25年前のわが国の自閉症に関する研究は非常に前近代的であり、国立大学病院の教授や自閉症の専門機関の権威さえも自閉症を現在のような器質障害として認めず、母親が子を甘やかした結果の母源病と決め付けるような情緒障害説が大手を振ってまかり通っていました。

 

私たち夫婦はそんな学者先生の無知や社会的偏見と戦いながら、自閉症の子供をもつ親の会や支援者、ボランティアの人々の暖かい励ましを受けつつこの四半世紀を生きてまいりました。

 

長男耕の存在が私たちを共通の絆で結び付け今日の銀婚式を迎えることができました。

耕君ありがとう。これからも一緒に頑張ろうね。

 

  • アドバイス
    • 1人には長い歴史と思い出がある。個人的な体験といえども語らずにはいられない物語もあるだろう。銀婚式はそのための格好の舞台である。
    • 2自閉症というネーミングが一人歩きしているためであろう。いまでも多くの人が自閉症を自閉的と混同している。

  *3自閉症は、知恵遅れを含め、いろいろな発達障害を複合することが多いが、基本 

   的に共通するのは視覚、聴覚、触覚などの認知障害である。入力される外界からの 

   情報を正確に認識できないために他人や世間とのコミュニケーションがうまくいか

   ない。手、足などの各部品自体は正常なのだが、それらを統合する脳の中枢系の機

   能が弱いためにいろいろな不都合が起こると考えられている。

 

自閉症児が絵を描いているミロより優しくゴッホより激しくピカソより純真 蝶人

 

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