あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

谷川俊太郎・岡野大嗣・木下龍也著「今日は誰にも愛されたかった」を読んで

2022-04-30 09:23:04 | Weblog

照る日曇る日第1739回

 

詩歌界の超ヴェテランと極超新鋭3人ミサイルによる連詩歌集ずら。

 

連詩というても正式のそれではなく、岡野が詠んだ「ベランダに見える範囲の春になら心をゆるしても大丈夫」を皮切りに、谷川選手が、「思い出すなつかしいあの日と/反芻をくり返すくやしいその日と/今日のこの日もいつかは日々になってしまう」と受ける。

 

それを木下選手が「かなしみのフルコースです前菜はへその緒からのはるかな自由」と谷川に返し、

 

常に谷川の詩を通す形で、2人の歌人がボールを打ち合うやり方で2019年1月6日から5月13日まで続けられたラリーの記録である。

 

が、実作よりも後半部の3人による感想戦の方が圧倒的に面白かったのは、この企画の発案者であり感想戦の司会役でもあるナナロク社の村井社長のたくみのせいだろう。

 

全篇を通じて谷川選手の海千山千ぶりと木下選手の純情あとがきが深い余韻を残す好著である。

 

          戦争は果てなく続き四月尽 蝶人

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