蝶人物見遊山記第373回&鎌倉ちょっと不思議な物語第449回
いつも同じブツしか展示しない国宝館が、珍しく小田原国府津のお寺の密教美術を公開していた。なんでも昔国宝館のスタッフがこの平安時代9世紀に弘法大師の10大弟子の一人によって創建された寶金剛寺の美術品の修復をした恩返しの展覧会だという。
同寺の秘仏本尊の地蔵菩薩や観音菩薩も拝顔できるが、私がなろうことなら持ち帰りたいと思ったのは、鎌倉時代の14世紀に銅造された超小型の「誕生釈迦佛立像」と江戸時代17世紀の紙本着色された「西洋童子像」である。
前者は、母なる摩耶夫人の右脇から生まれた釈迦が、その直後に七歩歩いて右手で天を指し、左手で地をさして「天上天下唯我独尊!」と叫んだ瞬間のブロンズ像、後者は、家康の発令した「伴天連追放之文」以降に、弾圧を避けて同寺に隠匿された和洋折衷の絵画だが、まことに味わい深い逸品であった。
なお同展は来る12月3日まで同館にて秘かに公開ちう。
ホックニー遂に行かれず諦めて岸本歯科で入歯を入れる 蝶人