あまでうす日記

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「祖父佐々木小太郎半生記」~佐々木小太郎古稀記念口述・村島渚編記「身の上ばなし」より

2023-11-24 15:50:17 | Weblog

「祖父佐々木小太郎半生記」~佐々木小太郎古稀記念口述・村島渚編記「身の上ばなし」より

 

遥かな昔、遠い所で 第112回

 

第3話 貧乏あずり その3

 

それから舞鶴に嫁いでいる妹のこと、福知山二十連隊に入隊している弟のことを思った。満期退営しても帰る家がなかったら困るだろう……などと思うと、夜逃げの決心もすこし鈍ってきた。思い余ってうしろあたまに両手を組み、ゴロンと寝ころんで考えていた時、ちぎれた新聞紙が枕元にあったのをとりあげて、何気なく読むともなしに読むと、三文小説にちょうど私のように借金取にいじめられている男が、「今何といわれても金は一文もねえ。但しおれも男だから、キンタマだけは一人前のを持ってる。よかったら、これでも持っていけ!」とタンカを切るところがあった。

 

これを読んで、メソメソしている自分を不甲斐ないと思った。もっとこの男のように「ズブトクやらねばいけないと思った。夜逃げなんかやめにして、城を枕に討ち死にの覚悟で、やはり綾部に踏み止まり、逃げるにしてもそれからだ。と、私は虎の子の二十円あまりを持って、大阪へ鼻緒の仕入れに行った。今まで取引をしていた問屋へは借りがあるから顔出しができぬ。御堂筋の方へ行って別な問屋をさがした。すぐに二三軒見つかったが、何しろ二十円ばかりのはした金を持って虫の良い無理をいおうと「いうのだから、どうも敷居が高くて店に入れない。行ったり戻ったりしていると、近くに坐摩神社というりっぱなお宮があったので、私はそれへ参り、いきなり鈴をメヤクチャに鳴らして祈った。「どうか私を強くしてください! どうか私に勇気を与えてください!」と。それから店に行ったが、どうも敷居がまたげない。また神社に引き返して、今度は傍にある稲荷様にも祈ったが、やはり入れない。また引き返して三度目を拝んで行ったら、今度は入れた。

 

私は「今は金がないが、決して不義理はしないから、これだけで、できるだけ多くの商品を卸してくれ」と、十円を出して頼むと、主人は案外快く承諾して、五十円ほどの下駄と下駄の緒を送ってくれる約束をした。

 

この勢いで第二の店、第三の店へ行き、五円づつ金を入れて、商品を送ってもらう約束をし、それが豆仁という運送店に出荷されるところまで見届けて綾部へ帰った。

 

   キムタクと中居に続けて「新しい地図」まで汚すジャニー喜多川 蝶人

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