蝶人物見遊山記第375回&鎌倉ちょっと不思議な物語第451回
子育ての終わった30歳から日本画の筆をとり、92歳で没するまで、日本各地はもとより中国、インド、カンボジア、アフガニスタン、エジプトなど文字通り世界を股にかける旅の中で遭遇した人や風景や物をモチーフに、幾他の名作を遺した庄司福(1910-2002)の回顧展をみました。
そういう画家なら、世界各地の名所旧跡の絵葉書的な画題に満ち溢れているのではないか、と考えるところですが、案に相違し、殊に晩年になると、どこの馬の骨とも知れぬ石ころや野菜、湿原や山の滝に焦点を当てた、具象画というより抽象的な精神画のような象徴的な作風に変遷してゆくのが興味深い。
私がいっとう感心したのは、北海道大雪山の麓の雪原の木隗と、ここそこに点在する水芭蕉を描いた1987年の「到春賦」という作品で、ようやく白い花を開こうとする水芭蕉の蕾が、まるで春の到来を喜んで今まさに飛び立とうとするダイセツアカネヒカゲのように美しいのでした。
なお、来る11月26日に終了する本展に来場すると、旅に同行した彼女の息子庄司準氏の涙なしには読めない思い出の記、彼の伴侶で夭折した庄司貴和子(1939-1979)の代表作を併せて鑑賞することができます。
学会の池田大作大往生一時代が終わりましたな 蝶人