あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

吉増剛造著「ヴォワ Voix」を読んで

2024-02-14 13:58:14 | Weblog

 

照る日曇る日 第2018回

 

ムチュ―コ

―ソ

ク、ノ、キジュ

ッツ、ッペ  (「隅!日和山!」より引用)

 

日本語で「声」という詩集だから、読むと同時に、著者が自ら発音して、その声音と共に情報を読者に届けようとするのだろう。

 

吉本隆明が言葉には「自己表出」と「指示表出」の2種類があるというておる。

 

「自己表出」とは、胃が痛くなって「うっ」とか「痛い」と思わず叫んでしまうような人間の内臓の働きや心の動きに結びついた表現であり、「指示表出」とは新幹線から富士山を見て「ああ綺麗だな!」と連れにいうてみたりする、発語の対象が予め措定された表現であらう。

 

普通の文学作品で用いられるのは、殆どすべてが「指示表出」の言葉であるのに対し、この詩集で著者が使っている言葉は、珍しくも「自己表出」の言葉であり、ただその1点においても本書は、既存の詩集と隔絶した固有の値打ちを持っているといえよう。

 

これからの詩はだんだん大脳前頭葉に依存した詩が瓦解して、吉増流のその先にある内臓詩が栄えていくのではないだろうか。

 

「脳詩」消え「臓詩」栄えて肉躍る詩歌の時代そこまで来ておる 蝶人

コメント
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