西暦2022年蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第402回
- 初節句を祝う親戚のスピーチ
お父さんの幹夫君、お母さんの靖子さん、寅雄君のはじめての節句ほんとうにおめでとう。*1
唐突かも知れないけど、僕は寅雄君がこうやってにこにことあどけなく笑うのを見ていると、つくづく日本も平和になったものだと思います。
僕は自慢じゃないけれど2度も兵隊に取られまして、一度は南方、二度目は満州でした。敗戦後はソ連軍に捕まってシベリアで抑留され、昭和22年にやっと興安丸で舞鶴港にたどり着きました。
いやあ、命あってのものだねえ。九死に一生を得た、なんて今だから簡単にいえるけど、ほんとうに筆舌に尽くし難い目にあいました。*2
もうどんな大義名分があろうがなかろうが、戦争はこりごりです。若い方の前に出るとついつい昔話になってしまいますな。
しかし僕は今日出席されている諸君のなかでは最長老組だと思うので、いつ天に召されるやも知れない。*3
でも、幹夫君と靖子さんが、いつかある日、寅雄君に、今日の昔話をしてくれたらとてもうれしいな。そう思った次第です。ご清聴ありがとう。
- アドバイス
- 1旧世代の親戚が、ひ孫世代に向けて初節句の日に贈ったこころのメッセージである。
- 2あいさつやスピーチを生かすも殺すも、言葉やテクニックではなく、話者が生きてきた人生と体験そのものではないだろうか。
- 3これだけは伝えておきたいと思うことをしっかり話せば、確実に相手に伝わるものである。
「こころ旅」を見る度に気になることは火野正平より5人のスタッフ 蝶人