照る日曇る日第1746回
本箱から転げ落ちた文庫本を拾い上げると昔講談社から出たこの文庫だった。ちょうど今「鎌倉殿」に引っかかっているので、真ん中辺の「頼朝挙兵」から「木曽義仲のふるさと」、「一ノ谷と屋島」と読む進むと、なんの抵抗もなく読めるので、とうとうおしまいの「鎌倉幕府滅亡」までツラツラと読んでしまった。
そこで改めて全体を俯瞰してみると、本書は編年体の構成になっていて、平安から鎌倉時代の歴史的事件や人物をその発生現場に立ち会いながら叙述するドキュメンタリーな紀行文であることが遅まきながら分かった。
そういえば宮脇俊三は有名な鉄道マニアであり、偉大な編集者でもあったことに今頃気づいたのだから、世話は無い。それにしてもこの人の文章のきわめて簡潔にして用を得て、まっとうなことよ。文は人なりとはよく言うたもので、その博識と学識を秘めながらも謙虚でざっかけない人となりが、読者をしぜんと魅するからに違いない。
私は急いで冒頭の「桓武天皇と渡来人」に戻って、すっかり忘却の彼方にあった平安鎌倉時代の歴史を著者と一緒に全国津々浦々を旅しながら勉強し直したのであった。
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