あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

内田樹・白井聡対談本「新しい戦前」を読んで

2023-09-11 11:03:04 | Weblog

 

照る日曇る日 第1955回

 

殺到する国内外の重要課題に正常に対応できず、「新しい戦前」どころか「腰だめ戦中」という末期的症状に喘ぐ岸田大軍拡内閣とその周辺を丁寧に総括する興味深い新書本です。

 

ウクライナ戦争への加担をバネに、ますます対米従属を深めつつ権力維持に邁進する異次元男の腐敗と堕落、異次元政治の乱脈ぶりは対話者が指摘するとおりですが、私は本書第5章「日本社会の何が幼稚か」で取り上げられた子供の将来や教育の現状の悲惨さに心が暗くなりました。

 

今の子供は小学生の頃は軍隊式の「体育座り」を除いてまず良しとして、中学生になると急激に眼の輝きと自由闊達さを失い、教育の目的は「成熟した市民になることである」という理念を忘れた画一的で孤立的な受験教育の中で、人間らしさと学びの自発性を失い、その弊害を全身に浴びたまま大学に入って来るといいます。

 

だからゼミに入って「なんでもいいから自由に書いてみろ」と言われても自分の頭が無いから何も書けず、仲間と付き合ったこともないから議論も出来ない。こういうのが大学を出てマスコミに入ると、総理記者会見で俯いて終始パソコンを打っていたり、質問を強いられると「総理、教えてください!」などとほざくのでしょう。

 

その大学ではかつての教授会が崩壊し、政府・文部省直括の学長・理事長による政治支配が貫徹されており、安倍蚤糞以降マスコミは放送法によって完全に権力にひれ伏しているのですから事態は深刻ですが、それでも諦めない元気な2人の「百万人と雖も我行かん」のおじさんは、若者に向かって“勇気を出して恋と革命に殉じよ!”と輝く三色旗を振り続けるのでした。

 

    独逸行き空しく独逸から帰り来し1冊の本机上に佇む 蝶人

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