あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

ブレーズ・パスカル著・塩川徹也・望月ゆか訳「小品と手紙」を読んで

2023-09-14 11:55:43 | Weblog

 

照る日曇る日 第1957回

 

誰でも枕頭の書というのがあるだろうが、私のはかつては「プルタルコスの対比列伝」、「モンテーニュのエセイ」だったが、今は「パスカルのパンセ」を枕元において、ちびちび読むのがここ数年の夜の日課である。

 

本書はその「パスカルのパンセ」とは別の著作を1冊にまとめたもので、「パンセ」がキリスト教の護教論だとしたら、それ以外の領域に属する科学論文や身内に宛てた私的な書簡などで多彩に構成されている。

 

「幾何学的精神について」という断章では、「最良の書物とは、読者が自分でもこれなら書けたかもしれないと思うような書物だ。」などと俗耳に心地よい科白を吐き、高尚、崇高を退けてむしろ卑近、普通、平俗を推し?ているが、1654年11月23日夜に、突如降臨した「回心」の有名な記録「メモリアル」などは、奇蹟的な霊感に満ちて俗人を寄せ付けない。

 

パスカルはルイ13世から14世、宰相リシュリューからマザランの時代をたったの39年間、さながら流れ星のように光り輝いた天才で、その病いがちで短い生涯の大半を敬虔なジャンセニスト、数学者、科学者、宗教哲学者として生きたが、意外なことに「計算機」を発明してスエーデンのクリスチーナ女王に献呈したり、「真空」の有無についてデカルトと論じあったりしているのは、その人間性がとても身近に感じられ、親しみが持てる逸話である。

 

パスカルが33歳のとき、重い眼病を患っていた姪のペリエ嬢が、ポール・ロワイヤル寺院の聖遺物を患部に押し当てると、間もなく症状が消えて完治するという「奇蹟」が起こった。

 

これを知ったパスカルの妹シャルロットが、身内の反対を押し切って修道女になってしまうのだが、神仏の加護で母親の眼病を奇跡的に完治できた私の祖父小太郎や、熱心なカトリック信者となって生涯を全うした妹のことを思いだし、まっこと感慨深かった1冊でした。

 

    大谷は一天俄かにかき曇りノーコン藤波光り輝く 蝶人

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする