<少し前に訪問した老舗覚え書き・7>
日本橋・高島屋の裏手にある吉野鮨本店。明治12(1879)年の創業で、ここも元々は屋台からの出発だったそう。大正12年の関東大震災まで日本橋には魚市場があったので、この店の歴史は江戸前鮨の歴史と密接にリンクしているはず。主人は鮨に関しての研究書(中古で手に入れた)も書いておられるし、老舗の名店だけに敷居が高そうで、最初はランチで利用してみた。摺りガラスの入った木戸を開け、中に入ると左側にL字のカウンター、右にテーブル席。全部「すし」と読む色々な漢字が飾ってある。建物自体は古くはなく(1970年とのこと)思ったよりも庶民的なざっくばらんな雰囲気。
カウンターに座らせてもらって、箸と醤油皿が用意され、メニューから握り鮨のおきまりを注文。値段と貫数の違いで4種類用意されている。写真で見たことがある五代目と思しき方に握ってもらった。全ての握りが下駄に乗せられて置かれた姿はこれぞ「ザ・江戸前鮨」といった感じ。全ての握りには煮切りや煮ツメが塗られているのでそのまま口の中へ。しっかり酢の効いた飯の味とタネの味や甘い煮ツメの味が渾然一体となって旨い。この店特有の薄焼き玉子の握りもバランスがいい。他所ではほとんど見ないが、これ、他の店も真似てやればいいのにと思う。鞍掛けになったものや海苔を帯にした玉子の握りより余程いいと思うんだけどなぁ。
落ちついた庶民的な雰囲気だし、応対も丁寧だし、おきまりがあるので値段に気兼ねすることもないし、握りは旨いし、言うことのないお店。若い方で、これから鮨屋のカウンターに、という人にもうってつけのお店じゃないだろうか。(勘定は¥2,500程度)
東京都中央区日本橋3-8-11
(吉野鮨 よしのずし よしのずしほんてん)