「みますや」に続いて伺ったのは大衆酒場の名店「升亀」。となりの「大越」と並び神田のガード下の顔だ。ここはいつ頃の創業なのかは調べてみても分からなかった。土曜日だし、店に入った時間が遅かったのでちらほらと空席が目立ってすんなりと座る事が出来た。平日ならスーツ姿のサラリーマンで一杯だろう人気のこの店もこの日は普段着の人も。それでも時間的にはもう21時を過ぎているので大盛況だ。
店に入るなり主人が「ごめんね、まぐろぶつ切らしちゃってる」とひと言。まるでこちらが何を注文しようとしているのか心の中を読んでいるよう。そう、それ注文しようと思って来ました(笑)。それでも土曜日だけ100円で提供するというここの名物「げそ天」は残っていたので、もちろん注文。100円だからって手抜きなしでしっかりとヴォリュームのあるひと皿。最初に日本酒(大関)を燗でもらい、珍しくハイボール(ここでの名前は「ウイスキー・ソーダ」)も注文した。自分はあまり好んでウイスキーを飲まないが、ちょっとスッキリしたものが飲みたかった。レモンの輪切りが入れられたハイボールは…旨い。これにはやっぱり揚げものを、と「メンチカツ」を追加。「あっとおどろく大きさ」と壁に貼ってあったが、皿が届いて本当にあっと驚いた。ものすごい大きさ。平皿一面に一枚のメンチカツ! こ、これ400円で大丈夫ですか? しかも旨い。
給仕のおばちゃんは割と無愛想だったが(態度が悪い訳では全然ない)、店を仕切る主人が、ササッと動いてバシッと決める、そのタイミングが絶妙。ひと言声をかけてくれる間合いがまた的確。そろそろ店じまいの準備を始めているので椅子を上げた席が目に入ったが、「ん?」と思ったとたんにサッと来て「椅子ごめんね」と声をかけてくれるし、つまみの注文がラストにかかり始めると「まだ、これとこれ以外はいけるからね」と気の効いたひと言。これだけの大箱でそれが出来るスキルがすごい。
しばらくするとお姉さんが3人前ほどのポテトサラダを皿に盛って、「これよかったら食べてね」と置いていく。巨大メンチカツを平らげた後で、いやいやもう食べきれないよ、と断ろうとするも「いいから、いいから」と…。どうも店じまいで明日は休業日なので残った惣菜を分けて最後の客に配っているよう。その心意気に打たれてがんばって食べたが、どうしても完食出来ず(申し訳ない)。さぁ、帰ろうと勘定をしにレジまで行った連れが「えっ?」とぶっ飛んでいる。どうしたのかと訊くとその金額2人で¥2,300! 安さに驚いていたのだ。しっかりサイズのげそ天といい、巨大メンチカツといい、サービスポテサラといい、安い値付けの酒類といい、儲ける気ないの? 嬉しい心意気。恐るべし神田。恐るべし升亀。(勘定は¥1,150)
東京都千代田区鍛冶町2-14-2
※残念ながら平成25年末に閉店しています