El Mocambo 1977 / The Rolling Stones (2022)
事件です。ストーンズ(The Rolling Stones)の60年にも及ぶ長い歴史の中で、最もファンから発表を熱望された音源のひとつ、1977年にカナダはトロントの「エル・モカンボ」というクラブでのライヴ音源がとうとう正式に発表されることに。かつて2枚組ライヴ・アルバム「Love You Live」(ジャケ下)のC面にこの時の音源が一部採用され、その小さいハコならではのルーズで生々しい音と、彼らのルーツのカヴァーという内容がファンを痺れさせた”あの”エル・モカンボの音源がとうとう聴ける!
ただし発表されたアルバム・ジャケットを見て一抹の不安が。ストーンズのアートワークの出来の悪さ(特に発掘音源関係)は定評があるが、この黒地にネオンのLip & Tongue(以下ベロ)デザインはあまりにも酷い…。GOを出したのはミック(Mick Jagger)なのだろうが、当時の雰囲気を醸し出すでもなく、特に優れたベロ・ヴァリエーションでもなく…。過去の資料から、残存している使えそうな現場の写真が思いのほか少ない事は想像がついていたが、これなら数多出されたブートレグの方がデザイン的に優れたものがあるのでは…。
それはさておき、音。事前にネットで発表された2曲はあの「Love You Live」とは音場が全然違い、小さいクラブの雰囲気に乏しく…。ネットでそれ以上深追いすることは止めてCDの到着を待った。それが発売日になっても配達されず、無情にも”配達遅延”の表示。先にネット上に全曲上がってしまったが、それらは聴かないようにガマン。そして予定より2日遅れてやっと商品が届いた。そういえば商品の到着を待ち焦がれるアルバムなんて本当に久しぶりだ。
ジャケはデジパック穴あきで、インナーを入れ替えるとネオン・ベロの色が変わるようになっているが、やっぱり全然イケてない。ライナーの写真にビル(Bill Wyman)を載せないイケズも相変わらず。全くもう…。恐る恐るCDをトレイにのせ再生。お、確かに「Love You Live」収録のような音ではないがカッコイイ。件のビルのベースが目茶苦茶オンなミックスになっていて、別の意味でクラブっぽさは出ている。決してバランスは良くないが、続けて聴いていると違和感はどこかへ行ってしまった。ミックス担当はお馴染みボブ・クリアマウンテン(Bob Clearmountain)。にしてもいい音だ。よくこれらが今まで流出しなかったものだ。この頃のミックのヴォーカルはねちっこくていいなァ。キース(Keith Richards)の弾くギターも近年のように”ジャヤラーンッ‼”だけでなく色気があってカッコイイ。「Love You Live」では聴いたことが無い音が入っていたりするが、細かい分析は誰かがやってくれるだろう(笑)。
当時、キースはドラッグ禍(警察禍?)にあったし、カナダのトルドー首相(現首相の父)の細君マーガレットがストーンズに入れ上げてこのライヴにも同行し、首相がメディアに弁解を述べるなんてこともあったはず(どうもロニーともミックとも関係があったようだ・苦笑)。でも無双だった70年代のストーンズは様々なトラブルがあっても関係なしに突き進んでいた時代。歌詞だって忖度なしでFワードを使うし、”紳士”になってしまった近年と違ってやりたいことをやっている。そんな奴らが小さいハコで好きに演っているんだから、かっこよくない訳がない。ボーナス3曲を同じ盤の最後に入れてしまったことだけ気に入らないけれど(上手く挟みこむ事も出来たろうに)、当分こればかり聴きそうだ。
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- Label : Polydor
- ASIN : B09TS84LC3
- Disc : 2
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