第32期棋聖戦七番勝負、山下敬吾棋聖と挑戦者、趙治勲十段の第3局は2月7日、8日、愛知県田原市で行われ、白番の山下棋聖が中押し勝ちし、通算成績を2勝1敗とした。
左下で始まった最新形の難解な戦いは、双方とも生きる分かれとなったが、山下棋聖が右下に先着して流れをつかんだ。この後、趙十段は左上に手をつけ、捨て石作戦で白を締め付けて盛り返したが、山下棋聖は右上黒の大模様へ果敢に打ち込み、巧みにしのいで勝負を決めた。
第4局は21、22日、長崎県雲仙市の「富貴屋」で行われる。
<山下棋聖の話>
序盤で白が幾らか良くなったと思うが、それから難しい碁にしてしまい、自信がなかった。次も思い切っていく。
<趙十段の話>
黒47の押しが敗着かもしれない。その後、左上を締め付けた時は勝負になったと思ったのだが・・・。
(読売新聞より抜粋)
◇ ◇ ◇ ◇
後半、山下棋聖が相手の黒模様に打込み、巧みにしのいで2勝と一歩リードしました。
攻めが信条の山下棋聖ですが、シノギの達人である趙十段のお株を奪う打ちぶりでした。
一方、序盤から時間をいっぱいに使った趙十段、最後は攻め急いでポキッと折れてしまった印象です。
時間に追われていたこともあったでしょうが、じっくりと構えていれば勝機もあったようです。
趙十段にとってはシノギより攻めの方が難しいのかもしれませんね。
この第3局、1日目の封じ手が26手と最近では異例のスローペースでした。
長考といえば絶頂期の趙十段、常にギリギリの最善手を求める姿勢は鬼気迫るものがありました。
新世代との決戦で往時の鬼神の迫力が目を覚ましたのでしょうか。
本棋戦も3局を終えていよいよ正念場、4局目以降の熱闘が楽しみです。
◇ ◇ ◇ ◇
今回の対局地は愛知県田原市の「伊良湖ガーデンホテル」。
伊良湖には何度か訪れたことがありますが、一番思い出に残っているのは高校時代に友人5人と行った時でしょうか。
渥美半島の太平洋側の名もない浜辺でしたが、長く続く砂浜は早春の強い風が吹いました。
間もなく社会人になる期待と不安を抱え、荒波と戯れたあの一瞬は青春映画の一コマのようでした。