マルチーズのコロはもうすぐ10歳。最近の飼育環境の向上もあり、犬の平均余命もずいぶん長くなって、コロの年は人間でいえば50歳代半ばといったところだろう。飼い主である私コロ健とさほど変わらない。まあ、初老の入り口が見えてきたところといえる。
そのコロ、いろいろと病気持ち。数年前から膀胱結石だのクッシング症候群だのを患っていて、食事療法(pHコントロール食)とか、薬物療法をしている。心臓もあまりよくないといわれていたが、最近、調子がよけいに悪くなったのかおかしな咳をするようになった。肺水腫という、肺から心臓への血液の戻りが悪くなった病気でもではないかと心配になって犬猫病院に連れて行った。これはその日、私が発見した、飼い犬とその飼い主の偶然の一致の話。
待合室で待つこと10分。私と妻は、コロとまだ完調でなく少々心配だったので一緒に連れて行ったナイトを足下に待たせていた。始めはいい子にお座りして待っていたコロも次第にも飽きてきたようで、ふてくされた顔をして待合室の床にモップのようになってへばりついていた。何匹かの犬が前を通り過ぎるが、犬にも、またその飼い主にも全く興味を示すことはない。物憂げそうに待合室を見渡していた。コロはもともとほかの犬にあまり興味を持つことのない犬なので、変だとも思わず眺めていた。コロと違ってナイトは好きなタイプの犬がいると無性に遊びたくなってしまうので椅子の下で伏せさせておいた。待合室に面して、診察室のドアが3つあり、時々人と犬が出入りしていた。と、二匹が待ちくたびれてきた頃、私たちの座っていた椅子の前の診察室のドアが開き、中からダックスフントを抱いた女性が出てきた。一緒にいた妻も認める細身の美人で、裾の広い花柄のミニスカートからはほっそりした長い足がみえる。そんな彼女の姿を私と妻、そしてコロ、二人と一匹がドアの開いた瞬間、一斉に見たのだと思う。彼女も視線を感じたようで、その場に一瞬緊張(?)が走った。
私は目のやり場に困ってすぐにうつむき、妻もジロジロみては失礼だと思ったのだろう、彼女からすぐに目をそらした。ところが、私の目をそらした先にいたコロ、即座に立ち上がってちぎれんばかりに尻尾を振り、さらにはクンクンと鼻まで鳴らしている。リードを強く引っ張るので、飛びつくことにならないように気をつけながら、その女性のほうに近寄らせた。 (明日につづく)
おいおい、心臓にさわるぞ