先日、一口馬主だという知人から「いやあ、ちょっと感動したことがありました」という話を聞きました。
彼はもう20年以上も一口馬主、いわゆる会員制の法人が一頭の馬を飼う馬主になっていたのだそう。
馬を飼って世話をするには相当のお金がかかるわけで、それを法人格をもつ法人が所有し、馬主資格を持たない人たちが共同馬主として、数十から500口ほどに分割した商品ファンドを購入するという形の金融商品なのだそう。
形はどうあれ、皆で気に入った一頭の馬を飼い、それがレースで活躍するのを期待するほか、実際にレースで買って得た賞金は60~70%を口数に応じて受け取ることができるという立派な馬主的な立場になります。
JRA(日本中央競馬会)の正式な馬主資格を得ようと思ったら、年間所得や資産額などかなり高いハードルがあって、早々なれるものではありません。
それが一口馬主であれば、最小数万円で月々も数千円の出費程度で馬主の感覚が味わえるというのですから、単なる投資というよりは趣味的・娯楽的な感覚で競馬を楽しめるということになります。
もちろん、賞金の配当以上に自分の馬に対して馬券を買って当たれば二重に大きな喜びが得られるというわけです。
しかし一口馬主の楽しみとは何か、ということで、あるサイトがアンケートを取ったところ、ダントツに多かった答えは「愛馬の活躍・近況に一喜一憂する」というもので、80%以上の回答を得たのだとか。
逆に「投資商品としての魅力」という回答率はわずか2%だったのだそう。
一口馬主になれば、実際にそれを育てている北海道の牧場へ行けばその馬に会えたり、出走する全国の競馬場へ応援旅行に行くという楽しみもあるのだそう。
今はネットの発達もあり、金融商品としての制度も確立して、健全な娯楽としての側面が強くなっているようです。
…で、先の知人の話。
一口馬主の場合、当歳(人間の0歳)~2歳の時期に出資を行なうのだそうですが、彼は今はもう3歳になる牝馬の一口馬主でずっと見守ってきたのだそう。
しかしその彼女(牝馬)はJRAではずっと一位を取って勝つことができず、9月第一週の「3歳未勝利戦」というレースが最後のひのき舞台に。
ここで勝つことができなければ、多くは地方競馬に転出したり、あるいは乗馬用の馬になったり繁殖馬になったりと、もう大きなレースに出ることができません。いわば最後の正念場。
そして手に汗握るJRA最後のレースで、なんと彼女は一着となり最後のレースで初勝利を手にしたというのです。
「いやあ、もう家中変な興奮に沸いちゃって大変だった」と彼はちょっと興奮した様子です。
馬券も当然その馬だけの単勝で買ってあって、1万円の馬券が17万円になったそう。
「もっとも、今までに12万円すってましたからね。月会費も加えるとまだトントンにもなりませんが、あの娘がねえ、という喜びの方が大きかったです」
聞けば、馬主になった馬は成長の記録が定期的に届くのだそうで、若い頃からの様子が思い浮かんだとのこと。
創造するに、自分の子供が運動会で大活躍して一等賞を取るのを見守る親のドキドキ感に近いような気がしました。
おまけに、「最近の競馬場は、若い人であふれかえっていますよ。女性でも自分の馬を撮影するのにとっても大きな一眼レフレンズを持ち込んだりしています。昔の赤ペンに鉢巻きの親父は完全に少数派です。時代は変わりました」と、最近の競馬事情はそんな感じなのだそう。
子供が成長してしまって、日々の暮らしに張り合いがない、なんてときには、こんな形でちょっとしたお金で愛情を注ぐ対象を見つけるということもあるのかもしれませんね。
こんなせかいがあるのかと、ちょっと興味深い話でした。
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