北海道で一番歴史があって規模の大きな公募展、「道展」を観てきました。
毎年芸術の秋のこの時期に札幌市市民ギャラリーで開催されて今回が97回目。
元々は「全北海道美術展覧会」と称していたのですが、当時の新聞が「道展」と書いたことでその名前の方が一般的になってしまい、今では協会自らが「道展」と呼んでいます。
高校生の時に工芸同好会を仲間と共に設立し、当時の美術の先生から金工を教えてもらったことは良い思い出です。
なので、どちらかというと絵画よりは工芸や彫刻、版画などの方に興味を惹かれるのですが、やはり大きな絵は良いものです。
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受付を終えて最初の部屋に、工芸作品群とともに最高の賞となる北海道美術協会賞の栄誉に輝く「最後の足掻き」という絵がありました。
水彩で、牙をむき出しにしたサメの絵ですが、白黒を基調にして大胆な構図ですが、細部は非常に細やかに描かれていてと共に作者の船井勇佑さんは若干19歳とのことで、若いながら大変な才能の持ち主です。
工芸でも絵画でも版画でも、古くからの技法の中で巧みに作られた作品も良いですが、そのジャンルの中で新たな技法を投げかけてみる人に「そう来たか!」と驚きを与えるものもあり、そういう作品を見ると心がざわめきます。
今回は版画の作品の中で、作者自身の版画を切り貼りした作品が応募され、審査員のなかで物議を醸しだしたという説明がありました。
「そう来たか!」もあれば、案外シンプルな技法で「これでいいの?」というようなものもあり、それもまた作者の意思を表した作品なのですね。
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油彩の作品の中に道路舗装の割れ目を描いた「滲み寄る」という作品がありました。
作者は小樽市の増子芳朗さんと言う方ですが、道路舗装の傷みすらこうしてみると人の心を動かす何かがあって、芸術家の手にかかるとそれが人の心を動かす絵になるというわけです。
絵の中に道路を描いている作品は数あれど、敢えて舗装の傷みを描いている作品に初めて出会いました。
何でもいいのです。人の心を掻き立てる何かがありさえすれば。
道展の札幌開催は11月5日(日)までです。
芸術の秋をご堪能ください。
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