P.42 すべての人間がまず一番に必要としていることは健康と精神の安定、
そして尊厳を維持できる条件のもとで生きることです。
次に身に着ける衣服、食べ物、住環境の質の改善へと発展させていきます。
残念ながら今日では生活の質そのものがひとつの贅沢となってしまいましたが。
私の父は、どちらかというと綺麗好きで、
生活が便利なように、手作りの棚や収納をせっせと作っていました。
でも、それらは味気ないラワン材で、カンナがかかり、
怪我はしないものの、インテリア的美しさはゼロでした。
「な~んか、雑誌に出ている家と、我が家は違うわねぇ」と呟いた私に、
父は
「これは<仮の姿>。娘たちを嫁に出して、落ち着いたら美しくする!」
と言っていましたが、
最期までその<仮の姿>から抜け出すことは出来ませんでした。
戦後、物資の無い時代を生き抜いてきた父母は、
<気の毒な世代>とはいえ、
もうちょっと何とかならなかったのかしらん??と思います。