教員免許更新制の話は、もう少し続きますが、今日は本の話を。
佐川光晴「おれたちの青空」(集英社、1260円)。これは前作「おれのおばさん」のモロ続編ですので、前作から読まないと判りません。今までの筋自体は中で解説されてるので、これだけ読んでも判るかもしれないけど、それはよくない。前作は坪田譲治文学賞を受賞した「感動の青春小説」。そこから読まないと。
裏に前作「おれのおばさん」の紹介文が出てるのを引用すると、「東京の名門中学に通う陽介は、父の逮捕をきっかけに一家離散。母の姉、恵子おばさんが切り盛りする札幌の児童養護施設「魴鮄(ほうぼう)舎」に居候することに。常に真向勝負、ユニークでエネルギッシュなおばさんに導かれ、陽介は自らの生きる方向を見出していくー。」というのが、前作。
で、今作も陽介の話かなと思うと、まずは施設にいるもう一人の中学生「卓也」に視点が移っている。続いて、「おばさん」こと、後藤恵子さんの語り。最後に「陽介」。三人の視点に分かれた中編二つと短編。今回は中学3年になり、この施設は中学生のみということもあり、高校進学をどうするかが大きな課題。と同時に運営側のオトナの事情も、「おばさん」の視点でたっぷり出てくる。子供たちの事情は、もう声の掛けようがないくらいの、まあ一言で言えば「かわいそう」というしかないのかもしれないけど、過酷な運命に言葉がない。しかし、運命に立ち向かい「内なる自立」を獲得していく、その歩みには心の底から感動する。こんな感動的な小説は久しぶり。必読。
中学生、高校生、大学生などの若い人ばかりでなく、大人、特に子供と関わる親や教師などは必読です。この小説2作を読む方が、研修になります。こういう本を読むことが、本当の教師の研修だと思います。
特に施設を開いている「恵子おばさん」の半生語り、若狭湾の網元の家に生まれ、女は船に乗れないと言われ、家を飛び出し北大の医学部へ。そこで演劇に目覚め、学内劇団で一つ下だった男と運命的なめぐり合い。結婚、出産、夫の浮気で離婚、演劇の夢を捨て、何でも働きながら、どうやって施設にたどり着いたか。なんだかその激しさがすごいけど、ものすごく実在感があります。何だかあのころ、こんな人いたなあという感じで。
僕は様々な生徒を見てきた中で、いわゆる「障害」という文字が付くタイプはかなり担当したことがあります。視覚障害を除き、身体、知能、精神の3分野、また発達障害の各タイプも大体経験しました。しかし、児童養護施設に関しては(全くないわけでもないけれど)、ほとんど知りません。「父の逮捕」とか「児童虐待」というような事例にも出会ったことがありません。(あったのかもしれないけど、少なくとも発覚して大問題になったという経験はないです。)そういう意味では、知らない世界といってもよく、それが感動にもつながっています。
こんなに成績が良かったり、スポーツができたりという生徒が出てきていいのかとも思うけど、そこは若い人向けの小説だから、いいとしましょう。僕は苦難の中を生きている子供たちの存在を知り(まあ、小説ですけど)、とても切なくて仕方ないけど、でも、人間は「許しあえる」し、「どんな苦難の中からも何かを学べる」ということを改めて確認できた思いがします。
佐川光晴「おれたちの青空」(集英社、1260円)。これは前作「おれのおばさん」のモロ続編ですので、前作から読まないと判りません。今までの筋自体は中で解説されてるので、これだけ読んでも判るかもしれないけど、それはよくない。前作は坪田譲治文学賞を受賞した「感動の青春小説」。そこから読まないと。
裏に前作「おれのおばさん」の紹介文が出てるのを引用すると、「東京の名門中学に通う陽介は、父の逮捕をきっかけに一家離散。母の姉、恵子おばさんが切り盛りする札幌の児童養護施設「魴鮄(ほうぼう)舎」に居候することに。常に真向勝負、ユニークでエネルギッシュなおばさんに導かれ、陽介は自らの生きる方向を見出していくー。」というのが、前作。
で、今作も陽介の話かなと思うと、まずは施設にいるもう一人の中学生「卓也」に視点が移っている。続いて、「おばさん」こと、後藤恵子さんの語り。最後に「陽介」。三人の視点に分かれた中編二つと短編。今回は中学3年になり、この施設は中学生のみということもあり、高校進学をどうするかが大きな課題。と同時に運営側のオトナの事情も、「おばさん」の視点でたっぷり出てくる。子供たちの事情は、もう声の掛けようがないくらいの、まあ一言で言えば「かわいそう」というしかないのかもしれないけど、過酷な運命に言葉がない。しかし、運命に立ち向かい「内なる自立」を獲得していく、その歩みには心の底から感動する。こんな感動的な小説は久しぶり。必読。
中学生、高校生、大学生などの若い人ばかりでなく、大人、特に子供と関わる親や教師などは必読です。この小説2作を読む方が、研修になります。こういう本を読むことが、本当の教師の研修だと思います。
特に施設を開いている「恵子おばさん」の半生語り、若狭湾の網元の家に生まれ、女は船に乗れないと言われ、家を飛び出し北大の医学部へ。そこで演劇に目覚め、学内劇団で一つ下だった男と運命的なめぐり合い。結婚、出産、夫の浮気で離婚、演劇の夢を捨て、何でも働きながら、どうやって施設にたどり着いたか。なんだかその激しさがすごいけど、ものすごく実在感があります。何だかあのころ、こんな人いたなあという感じで。
僕は様々な生徒を見てきた中で、いわゆる「障害」という文字が付くタイプはかなり担当したことがあります。視覚障害を除き、身体、知能、精神の3分野、また発達障害の各タイプも大体経験しました。しかし、児童養護施設に関しては(全くないわけでもないけれど)、ほとんど知りません。「父の逮捕」とか「児童虐待」というような事例にも出会ったことがありません。(あったのかもしれないけど、少なくとも発覚して大問題になったという経験はないです。)そういう意味では、知らない世界といってもよく、それが感動にもつながっています。
こんなに成績が良かったり、スポーツができたりという生徒が出てきていいのかとも思うけど、そこは若い人向けの小説だから、いいとしましょう。僕は苦難の中を生きている子供たちの存在を知り(まあ、小説ですけど)、とても切なくて仕方ないけど、でも、人間は「許しあえる」し、「どんな苦難の中からも何かを学べる」ということを改めて確認できた思いがします。