東京フィルメックスという映画祭を今やっていて、その招待作品で「ジャファール・パナヒ、モジタバ・ ミルタマスブ」の二人の名前がクレジットされているイラン映画「これは映画ではない」を見た。「これは映画ではない」というタイトルの映画。でも、映画ではないかと言われるかもしれないが、ここには二つの意味がある。
ジャファール・パナヒは、2009年のイラン大統領選でムサヴィ候補を支持し反体制派の立場で映像を撮った。そのことで、「反体制の宣伝活動に携わった」などとしてテヘラン革命裁判所から禁錮6年の判決を言い渡され、監督活動や外国への渡航を20年にわたって禁じられたという人物である。その後、保釈され、その間に作られたのがこの映画。従って「映画は撮れない」ので、友人の記録映画監督を招いて自分を撮ってもらう。自分は監督していないので「これは映画ではない」。もう一つ、監督活動や出国と並び、脚本執筆も禁止された。そこで自分が前に書いて映画化が許可されなかったシナリオを読む。「脚本を読むことは禁止されていないと思う。」で、本当は映画化されるべきだったが未だに映像化されていない世界が朗読と自作解説で示されるところを記録する。従って「これは映画ではない。」
ジャファール・パナヒという監督は、95年に「白い風船」でデビュー。これはカンヌ映画祭新人監督賞。アッバス・キアロスタミが脚本を書いた。2000年の「チャドルと生きる」はヴェネツィア映画祭金獅子賞。日本では2002年に公開され、9.11以後のアフガニスタン戦争との関係で大きな反響を呼んだ。2006年の「オフサイド・ガールズ」はベルリン映画祭審査員グランプリ。つまり三大映画祭制覇という監督なのである。この映画は、イランでは女性がサッカーを見られないということを世界に示した。どうしても見たいと男装してサッカー場に潜り込もうとする女子学生を描いたこの映画は、もちろんイランでは上映禁止である。ちなみになぜサッカー場に女性が入れないかと言うと、「男が汚い言葉で野次を飛ばすような風紀が悪い場所から女性を保護する必要がある」という理由かららしい。それなら男の入場をこそ禁止して、女だけで見れば解決すると思うけど。
こういう世界的に注目されている映画監督が、撮影した映画の中身のことで(撮影禁止、上映禁止と言った行政処分ではなく)、禁錮刑と言う刑事処分を科されようとしている。ちょっと他の国では聞いたことがない。戦時中の日本で記録映画監督の亀井文夫が治安維持法に問われた。ソ連や文革中の中国でも弾圧や粛清はあったが、映画撮影そのもので罰せられた例は少ないのではないか。そういう恐ろしいできごとを世界に示す映画として、これは見てみたかった。弁護士への電話、スマートフォンで撮った映像、飼っているイグアナの映像(部屋の中で放し飼いにしている)、ごみ処理にきた男性のインタビュー(美術の大学院生)などのなかで、先ほど書いたような過去のシナリオを読むシーンが長い。テレビには東日本大震災の映像(南三陸町の大津波の様子)が突然映し出されて、心を突かれる。イラン暦では新年が3月21日に始まるそうだ。日本が津波と原発事故で衝撃を受けていた時、イランは年末年始だった。若者たちは爆竹を持って町へ出て騒ぐらしい。テヘランの町は騒然としている。「これは映画ではない」ので、筋らしい筋もないが、とても興味深い映像体験だった。
この映画は、26日(土)10時半からもう一回上映がある。(有楽町マリオンの朝日ホール)今紹介しても遅いんでしょうけど。国際的な支援、注目が重要だと弁護士も電話で言っていた。今年のベルリン映画祭の審査員に招かれていたが、出国は認められなかった。様々な方法で支援することができないかと思う。まずはこの映画がもっと上映されるといいのではと思う。
ジャファール・パナヒは、2009年のイラン大統領選でムサヴィ候補を支持し反体制派の立場で映像を撮った。そのことで、「反体制の宣伝活動に携わった」などとしてテヘラン革命裁判所から禁錮6年の判決を言い渡され、監督活動や外国への渡航を20年にわたって禁じられたという人物である。その後、保釈され、その間に作られたのがこの映画。従って「映画は撮れない」ので、友人の記録映画監督を招いて自分を撮ってもらう。自分は監督していないので「これは映画ではない」。もう一つ、監督活動や出国と並び、脚本執筆も禁止された。そこで自分が前に書いて映画化が許可されなかったシナリオを読む。「脚本を読むことは禁止されていないと思う。」で、本当は映画化されるべきだったが未だに映像化されていない世界が朗読と自作解説で示されるところを記録する。従って「これは映画ではない。」
ジャファール・パナヒという監督は、95年に「白い風船」でデビュー。これはカンヌ映画祭新人監督賞。アッバス・キアロスタミが脚本を書いた。2000年の「チャドルと生きる」はヴェネツィア映画祭金獅子賞。日本では2002年に公開され、9.11以後のアフガニスタン戦争との関係で大きな反響を呼んだ。2006年の「オフサイド・ガールズ」はベルリン映画祭審査員グランプリ。つまり三大映画祭制覇という監督なのである。この映画は、イランでは女性がサッカーを見られないということを世界に示した。どうしても見たいと男装してサッカー場に潜り込もうとする女子学生を描いたこの映画は、もちろんイランでは上映禁止である。ちなみになぜサッカー場に女性が入れないかと言うと、「男が汚い言葉で野次を飛ばすような風紀が悪い場所から女性を保護する必要がある」という理由かららしい。それなら男の入場をこそ禁止して、女だけで見れば解決すると思うけど。
こういう世界的に注目されている映画監督が、撮影した映画の中身のことで(撮影禁止、上映禁止と言った行政処分ではなく)、禁錮刑と言う刑事処分を科されようとしている。ちょっと他の国では聞いたことがない。戦時中の日本で記録映画監督の亀井文夫が治安維持法に問われた。ソ連や文革中の中国でも弾圧や粛清はあったが、映画撮影そのもので罰せられた例は少ないのではないか。そういう恐ろしいできごとを世界に示す映画として、これは見てみたかった。弁護士への電話、スマートフォンで撮った映像、飼っているイグアナの映像(部屋の中で放し飼いにしている)、ごみ処理にきた男性のインタビュー(美術の大学院生)などのなかで、先ほど書いたような過去のシナリオを読むシーンが長い。テレビには東日本大震災の映像(南三陸町の大津波の様子)が突然映し出されて、心を突かれる。イラン暦では新年が3月21日に始まるそうだ。日本が津波と原発事故で衝撃を受けていた時、イランは年末年始だった。若者たちは爆竹を持って町へ出て騒ぐらしい。テヘランの町は騒然としている。「これは映画ではない」ので、筋らしい筋もないが、とても興味深い映像体験だった。
この映画は、26日(土)10時半からもう一回上映がある。(有楽町マリオンの朝日ホール)今紹介しても遅いんでしょうけど。国際的な支援、注目が重要だと弁護士も電話で言っていた。今年のベルリン映画祭の審査員に招かれていたが、出国は認められなかった。様々な方法で支援することができないかと思う。まずはこの映画がもっと上映されるといいのではと思う。