尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

都知事選と衆院選-投票率を調べてみる

2012年11月15日 23時59分49秒 |  〃  (選挙)
 中国共産党の新指導部など時間があればじっくり見るんだけど、はっきり言ってもうどうでもいい感じ。都知事選に衆院選が同日に合わさってしまった。1か月しかない。何でだ?という感じ。つまり、「国益」を考えるなら、今やってるべきだった。寒くはなったけど、まだまだ昼間は暖かい。積雪がある地域も山の上の方にはあるかもしれないが、まあ北国でも積もってない。予算編成は12月が山場。12月に選挙、確実に政権交代では、予算編成が滞る。特例公債法案、「ゼロ増5減」(っていうか、ただの5減でしょ)も、こんなに簡単に片付くんなら、10月にやれたでしょ。10月に法案を成立させて、今選挙すべきだった。そうでなければ、新小選挙区の区割りが確定する時期でもいい。違憲状態が確定しているのと同じやり方で選挙するんだから、今度の選挙も違憲である。「違憲選挙」。どの党が勝とうが負けようが、この選挙は憲法違反なのだ。さて、衆院選、野田内閣の話はまた別に書くとして…。

 都知事選的には、迷惑であると思った。消費税だ、TPPだ、五輪だ、原発だと言う議論も大切だが、都知事選は「人物本位で超党派、無党派」で臨みたいところである。昨日も共産や社民の関係者も来てたけど、登壇して挨拶してはいない。そういう党派にとらわれないスタイルで、大きな連合を作っていきたい。個別の議論を始めると、皆いろいろ意見があると思うが、それは今後じっくり議論すればいい。今現在、都知事でもないのに、都政の課題すべてに答えを出しておく必要はないだろうと思う。と言いつつ、総選挙が同時にあるとなれば、まあ自民に入れる人はほとんどいないだろうが、どこに入れる、あそこに入れないという話が出て来ざるを得ない。都知事だけ投票して、衆院選は棄権というわけにはいかないし。困ったなあ、迷惑だなあと正直思った。

 でも、考えてみると、それだけでもない。前知事から後継と言われている猪瀬直樹氏が立候補し、他にいないから自民党も支持する意向であると伝えられている。元々都議会自民は猪瀬氏にいい印象を持っていないらしい。「根回し」をせず「頭が高い」ということらしい。でも衆院選と同日になれば、両方には立候補できないから、出馬が取りざたされた人の多くは知事選には立たない。仕方ないから猪瀬でやるしかないということだろう。票が割れないので、宇都宮不利とも言えるが、石原前知事は自民ではない。「太陽の党」である。選挙時はどうなってるか知らないが。石原後継の猪瀬応援に一生懸命になる自民都議は少ないだろう。来年7月に都議選である。自分の選挙を考えると、衆議院選挙で自民候補を応援する方が優先するのではないか。つまり自民の猪瀬支持は「弱い支持」であると考えられる。そのあたりの「矛盾」を最大限に利用していくことも必要だろう。

 さて、データとして、都知事選と衆院選(比例区東京ブロック)の投票率と得票を見ておきたい。
 まず、都知事選。美濃部都知事当選時から。当選者、次点得票者、投票率の順番。

1967 美濃部亮吉(220万)  松下正寿(206万)  67.5%
1971 美濃部亮吉(361万)  秦野章(193万)   72.4%
1975 美濃部亮吉(269万)  石原慎太郎(234万) 67.3%
1979 鈴木俊一(190万)   太田薫(154万)   55.2%
1983 鈴木俊一(236万)   松岡英夫(148万)  47.9%
1987 鈴木俊一(213万)   和田静夫(75万)   43.2%
1991 鈴木俊一(229万)   磯村尚徳(144万)  51.6%
1995 青島幸男(170万)   石原信雄(124万)  50.7%
1999 石原慎太郎(166万)  鳩山邦夫(85万)   57.9%
2003 石原慎太郎(309万)  樋口恵子(85万)   44.9%
2007 石原慎太郎(281万)  浅野史郎(169万)  54.3%
2011 石原慎太郎(261万)  東国原英夫(169万) 57.8%

 つまり、昔は6割、7割が投票に行っていたが、近年は6割には行かない。5割ちょっと。半分以下の時もある。美濃部時代は「社共共闘」だった。それが崩れたのが87年から。鈴木や石原の2期目、3期目ともなれば、現職強しで投票率が下がる。2011年がちょっと高いのは、大震災で家にいてマジメな気分だったのではないか。選挙戦は低調だったのに、前回より上がる理由はそれしかない。

 では、衆議院選挙。2000年から。東京の投票率と各党の得票
2000 60.4% 民主(165万) 自民(110万) 共産(82万) 自由(77万) 公明(72万) 社民(38万) 
2003 58.3% 民主(229万) 自民(180万) 公明(80万) 共産(53万) (社民25万=当選ゼロ)
2005 65.5% 自民(266万) 民主(196万) 公明(82万) 共産(58万) 社民(30万)
2009 66.3% 民主(284万) 自民(176万) 公明(71万) 共産(66万) みんな(42万) (社民30万)

 ついでに直近の参院選を見てみる。2010年参院選の比例区

 投票率58.7%。民主(190万) 自民(125万) みんな(92万) 公明(70万) 共産(50万) 社民(25万)

 これでわかることは、衆議院選挙が一番投票率が高い。判りますよね。理由を書くまでもなく。
 従って、今回は都知事選もくっ付いてきたから、衆院選だけなら民主もダメ、自民もダメ、第三極、何それって、棄権に回ったかもしれないが、都知事選と一緒となると、6割は行く。ひょっとすると、もっと高くなる。それを考えておかないといけない。

 共産と社民だけでは何の足しにもならない、と言えば言い過ぎだが、全然足りない。国政選挙では民主に入れた大量の反石原票があるこの「民主党に近い反石原票」が、どう動くか。「3・11後」の反原発意識なども受けて、都民の票がどう出るか。はっきりしているのは、投票率が高くなるので、従来の支持層を固めるだけでは、誰も当選ラインに届かない。人柄のイメージなども含め、国政選挙とうまくすみ分けて、「宇都宮=清新」イメージをつくる。と同時に、ヤミ金勢力と全身でぶつかり、国政をも動かし、日弁連という全国組織を統率してきたという「強いイメージ」「組織人にして市民活動家」というイメージを、石原支持者(やさしさだけでは頼りないと思い、政治に強さを求める人)にも浸透させていくこと。とりあえず、そういった戦略も大事だろうと思う。
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追悼・森光子

2012年11月15日 21時06分12秒 | 追悼
 上演2017回を数える舞台「放浪記」や人気テレビドラマ「時間ですよ」などで幅広く活躍、文化勲章、国民栄誉賞を受けた女優の森光子(もりみつこ)(本名・村上美津(むらかみみつ))さんが10日午後6時37分、肺炎による心不全のため、都内の病院で亡くなった。92歳だった。(読売新聞より)

 僕はテレビドラマをほとんど見てこなかったから、森光子さんのテレビでの仕事は語れない。ドラマの名前くらいは知ってるし、「3時のあなた」の司会も見たことはあったけど。コマーシャルもやっていた。そういう気取らない下町のおかみさん風のテレビ女優だと思っていた。芸歴の長い女優で、舞台「放浪記」を持ち役にしていることは後に知ったことである。

 嵐寛寿郎(鞍馬天狗で有名な時代劇俳優)の従妹だったということは今回初めて知った。その縁で戦前から映画に出ていて、戦時中は戦地慰問を行うというような経歴は、あまり大事ではない。60年代頃に東宝を中心に映画にもずいぶん出ていた。最近評価が高い鈴木英夫監督「その場所に女ありて」(62)にも出ている。「ビジネスガール」として銀座の広告会社で大活躍の司葉子。一方、その姉の森光子は「男にだらしない」タイプでお金が足りなくなると、銀座の会社に妹を訪ねてくる。そういうやっかい者の姉をそつなく演じている。司葉子の洋装を美しく撮り、高度成長下の銀座に働く女を取り上げるという映画だから、森光子は引き立て役。和装で性格的に弱いタイプである。当時はその程度のチョイ役俳優だったのかという感じである。

 やっぱり「放浪記」の素晴らしさ、これにつきるだろう。「放浪記」は映画にもなっている。成瀬巳喜男監督、高峰秀子主演。これは成瀬、高峰コンビのいくつもの傑作には及ばない。それは原作にも問題があると思う。原作は素晴らしい詩情をたたえた、若い女性の貧困との闘いの貴重なドキュメントでもあるけれど、名声と功名心にはやる青春の嫌味な部分も伝えている。身近にいたら、あまり付き合いたくない感じで、親切にしてあげても日記に悪口を書かれてしまうような恐れを感じる。そういう原作の嫌味な部分はむしろ高峰秀子がよく演じていると思う。舞台の森光子は、長い時間をかけて濾過されていった、「放浪記」の素晴らしい部分を凝縮して演じていた。脚色した菊田一夫の素晴らしさもある。日本の大衆演劇が達成した最高の作品と言ってもいいのではないか。

 森光子さんは文化勲章を2005年に受賞した。日本では伝統演劇(能・狂言・歌舞伎・文楽)の役者は何人も文化勲章を受けているが、新劇や大衆演劇の俳優はほとんど受賞していない。まあ新劇人はほとんど左翼だったから、お互い賞の対象外にしていたのだろう。杉村春子は対象になったけれど辞退している。他には森繁久弥と山田五十鈴がいるだけである。文化功労者にまず選ばれ、その中からいずれ文化勲章が選ばれるというシステムに今はなっている。ではその文化功労者に選ばれた俳優はと言えば、東山千栄子、水谷八重子、森繁久弥、杉村春子、山田五十鈴、森光子、高倉健、仲代達矢、吉永小百合、大滝秀治。たったこれだけなのである。今年、山田五十鈴、大滝秀治、森光子が亡くなった。いやあ高倉健や吉永小百合が選ばれていたのは失念していたが、仲代達矢ともども今後の健康と活躍を祈りたい。
コメント (2)
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