4月の追悼記事は、愛川欣也と船戸与一を別に書いた。先月のまとめは外国から始めたい。ドイツのノーベル賞作家、ギュンター・グラス(4.13没、87歳)が亡くなった。ほとんどデビュー作の「ブリキの太鼓」のみが取り上げられる人で、そういうノーベル賞作家も珍しい。僕は余りにも大部なので、まだ読んでいない。フォルカー・シュレンドルフが監督した映画「ブリキの太鼓」は2回見たが。カンヌ映画祭大賞、アカデミー賞外国語作品賞を取り、日本でもベストワンになった。近年になって見なおしたが、確かに非常によく出来た映画だ。
(ギュンター・グラス)
グラスは小説も書いたが平和運動や政治活動への関わりが強く、一昔前に日本で言われた「進歩的知識人」のような位置にあった。だから、晩年の自伝でナチスの親衛隊体験を告白した時には、大問題になった。様々なタブーを怖れず直言した人だが、「ブリキの太鼓」一作で戦後日本とは違うドイツの歩みを象徴するような人物だったと思う。どうもドイツ文学は全般的にあまり読んでなくて、これ以上詳しくは語れない。
ポルトガルの映画監督、マノエル・ド・オリヴェイラ(4.2没、106歳)が亡くなった。やはり人間に不死はない。この106歳というのは、ただ長生きしたというのにとどまらず、100歳を超えて新作を撮ったという、新藤兼人をも超える映画史上の空前絶後の記録になるだろう。それはいいんだけど、では100歳で撮った「ブロンド少女は過激に美しく」は果たして面白いのか。長らく日本では見られず、初めて正式公開された「アブラハム渓谷」(1993)は「ボヴァリー夫人」を脚色した大作で、なんと「二人一役」の驚くべき作品だと言われたが、果たして面白いのか。そういうことは有名人が書いた追悼文には記されていない。ほんとに面白かったのですか?
(マノエル・ド・オリヴェイラ)
ジョン・レノンの先妻、シンシア・レノン(4.1没、75歳)の訃報も載っていた。この人は音楽、芸能活動をした人ではなく、幼なじみである。ビートルズ初期の曲はすごく好きで、そのころの下積み時代の話も読んでる。いわば「糟糠の妻」なんだけど、知らない人が多いだろう。まあ、愛川欣也の訃報でも、先妻のことは全然触れられていなかった。
日本では芸能界関連の訃報が多かった。ザ・ワイルドワンズの加瀬邦彦(4.21没、74歳)が亡くなった。自殺だという。この頃の「ザ・タイガース」「ザ・テンプターズ」とかの活躍を「グループサウンズ」(GS)と当時呼んでいた。曲は知ってるけど、時代的には自分の年齢が小さくて、よく判らない。慶応高校時代に茅ヶ崎に住んで加山雄三と親しくなり、グループの名付け親も加山雄三だという話。そういうことは訃報で知ったのである。でも、「想い出の渚」は素晴らしい名曲だと思う。
(加瀬邦彦)
萩原流行(はぎわら・ながれ 4.22没、62歳)の死因は結局どういうことになっているのだろうか?まあ、何にしても「事故」であるらしい。つかこうへい事務所から出てきた人とは知らなかった。あまり知らないのである。女優の三條美紀(4.9没。86歳)は戦後の大映映画で活躍した女優である。黒澤映画に出たと訃報にあるが、東宝の黒澤が大映で撮った「静かなる決闘」に出ただけである。「母もの」と言われた映画にたくさん出ている。データを見ると、結構見ているんだけどあまり印象はない。80年代には東宝映画で脇役をずいぶん務めているし、テレビや舞台もあるようだけど、あまり知らないのである。見ていてもあまり記憶に残らないタイプなんだろう。
(三條美紀)
戦後を代表するバレリーナ、谷桃子(4.26没、94歳)は名前は知っているが、見たことはない。「白鳥の湖」の舞台を千回務めたとある。そりゃ、すごい。奥村土牛の「踊り子」のモデルとあった。最高齢の女形、歌舞伎俳優の中村小山三(なかむら・こさんざ 4.6没、94歳)は、すいません、知りませんと言うしかない。
(谷桃子)
漫画家の小島功(4.14没、87歳)は、清酒「黄桜」のカッパのキャラクターを清水崑を継いで書いた人、「11PM」にレギュラー出演と言う、それを読んで思い出した。ずいぶん昔の人と思うと、「週刊アサヒ芸能」の「仙人」は昨年まで続いたとある。日本漫画家協会会長を務めた人である。安野モヨコは姪。考古学者の樋口隆康1(4.2没、95歳)は、いろいろ考古学の本に出てきたと思うけど、詳しく業績を語るほど知らない。京大教授で、橿原考古学研究所長だった。京大でシルクロード調査を行い、バーミヤンの石窟群を調べた。タリバン政権が爆破した遺跡である。
(小島功)
作家の白川道(しらかわ・とおる、4.16没、69歳)は、バブル華やかなりし時代の投資顧問会社での行為がインサイダー取引などで実刑判決を受けた人。その経験をもとに「流星たちの宴」でデビューした。これは確かに時代の証言でもあるハードボイルドで、面白いことは抜群。まあ代表作は「天国への階段」か。
(白川道)
ラーメン「大勝軒」でつけ麺を広めた山岸一雄(4.1没、80歳)は、東京では相当の有名人、特に池袋近辺では皆知っている。元最高裁長官町田顕(まちだ・あきら、4.5没、78歳)と言っても、ほとんど知らないだろう。三権の長である最高裁長官は皆知らない。最高裁事務総局の経験が長いような人ばかりがなるからである。国民が名判決だと思うような裁判をした人は最高裁入りはしないのである。

グラスは小説も書いたが平和運動や政治活動への関わりが強く、一昔前に日本で言われた「進歩的知識人」のような位置にあった。だから、晩年の自伝でナチスの親衛隊体験を告白した時には、大問題になった。様々なタブーを怖れず直言した人だが、「ブリキの太鼓」一作で戦後日本とは違うドイツの歩みを象徴するような人物だったと思う。どうもドイツ文学は全般的にあまり読んでなくて、これ以上詳しくは語れない。
ポルトガルの映画監督、マノエル・ド・オリヴェイラ(4.2没、106歳)が亡くなった。やはり人間に不死はない。この106歳というのは、ただ長生きしたというのにとどまらず、100歳を超えて新作を撮ったという、新藤兼人をも超える映画史上の空前絶後の記録になるだろう。それはいいんだけど、では100歳で撮った「ブロンド少女は過激に美しく」は果たして面白いのか。長らく日本では見られず、初めて正式公開された「アブラハム渓谷」(1993)は「ボヴァリー夫人」を脚色した大作で、なんと「二人一役」の驚くべき作品だと言われたが、果たして面白いのか。そういうことは有名人が書いた追悼文には記されていない。ほんとに面白かったのですか?

ジョン・レノンの先妻、シンシア・レノン(4.1没、75歳)の訃報も載っていた。この人は音楽、芸能活動をした人ではなく、幼なじみである。ビートルズ初期の曲はすごく好きで、そのころの下積み時代の話も読んでる。いわば「糟糠の妻」なんだけど、知らない人が多いだろう。まあ、愛川欣也の訃報でも、先妻のことは全然触れられていなかった。
日本では芸能界関連の訃報が多かった。ザ・ワイルドワンズの加瀬邦彦(4.21没、74歳)が亡くなった。自殺だという。この頃の「ザ・タイガース」「ザ・テンプターズ」とかの活躍を「グループサウンズ」(GS)と当時呼んでいた。曲は知ってるけど、時代的には自分の年齢が小さくて、よく判らない。慶応高校時代に茅ヶ崎に住んで加山雄三と親しくなり、グループの名付け親も加山雄三だという話。そういうことは訃報で知ったのである。でも、「想い出の渚」は素晴らしい名曲だと思う。

萩原流行(はぎわら・ながれ 4.22没、62歳)の死因は結局どういうことになっているのだろうか?まあ、何にしても「事故」であるらしい。つかこうへい事務所から出てきた人とは知らなかった。あまり知らないのである。女優の三條美紀(4.9没。86歳)は戦後の大映映画で活躍した女優である。黒澤映画に出たと訃報にあるが、東宝の黒澤が大映で撮った「静かなる決闘」に出ただけである。「母もの」と言われた映画にたくさん出ている。データを見ると、結構見ているんだけどあまり印象はない。80年代には東宝映画で脇役をずいぶん務めているし、テレビや舞台もあるようだけど、あまり知らないのである。見ていてもあまり記憶に残らないタイプなんだろう。

戦後を代表するバレリーナ、谷桃子(4.26没、94歳)は名前は知っているが、見たことはない。「白鳥の湖」の舞台を千回務めたとある。そりゃ、すごい。奥村土牛の「踊り子」のモデルとあった。最高齢の女形、歌舞伎俳優の中村小山三(なかむら・こさんざ 4.6没、94歳)は、すいません、知りませんと言うしかない。

漫画家の小島功(4.14没、87歳)は、清酒「黄桜」のカッパのキャラクターを清水崑を継いで書いた人、「11PM」にレギュラー出演と言う、それを読んで思い出した。ずいぶん昔の人と思うと、「週刊アサヒ芸能」の「仙人」は昨年まで続いたとある。日本漫画家協会会長を務めた人である。安野モヨコは姪。考古学者の樋口隆康1(4.2没、95歳)は、いろいろ考古学の本に出てきたと思うけど、詳しく業績を語るほど知らない。京大教授で、橿原考古学研究所長だった。京大でシルクロード調査を行い、バーミヤンの石窟群を調べた。タリバン政権が爆破した遺跡である。

作家の白川道(しらかわ・とおる、4.16没、69歳)は、バブル華やかなりし時代の投資顧問会社での行為がインサイダー取引などで実刑判決を受けた人。その経験をもとに「流星たちの宴」でデビューした。これは確かに時代の証言でもあるハードボイルドで、面白いことは抜群。まあ代表作は「天国への階段」か。

ラーメン「大勝軒」でつけ麺を広めた山岸一雄(4.1没、80歳)は、東京では相当の有名人、特に池袋近辺では皆知っている。元最高裁長官町田顕(まちだ・あきら、4.5没、78歳)と言っても、ほとんど知らないだろう。三権の長である最高裁長官は皆知らない。最高裁事務総局の経験が長いような人ばかりがなるからである。国民が名判決だと思うような裁判をした人は最高裁入りはしないのである。