尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

筑波大付属3校の場合-6年目の教員免許更新制②

2016年09月01日 21時28分28秒 |  〃 (教員免許更新制)
 ちょっと旧聞になるが、6月11日の朝日新聞東京版に、教員免許更新制に関する興味深い記事が載っていた。他紙にも載っていたが、朝日の記事が詳しいので、それをもとに考えることにする。いずれにせよ、東京版の記事だったので知らない人が多いだろう。

 新聞記事によれば、筑波大学付属の3校で、教員免許を更新せずに授業をしていた教員が4人いたというのである。その学校はいずれも筑波大付属の、中学校(文京区)、大塚特別支援学校(文京区)、坂戸高校(埼玉県坂戸市)だという。(坂戸に付属高校があったということは初めて知った。)30代~50代の教諭3人と非常勤講師1人で、失効後の期間は5年2カ月から1年2カ月だった。

 「免許更新講習の受講を忘れたり、受講後の手続きを失念したりしていた」ということである。1回目で書いたように、講習を受講していても「受講後の手続き」が済んでなければ、失効するわけである。「私的な資格」とされたから、「教員個人が忘れた」ように書かれているが、5年も経っているのだから、要するに「学校側が確認を忘れた」状態だったのである。そのままずっと忘れていれば、それで済んでしまうわけである。それで良かったんじゃないか。

 同大は「授業内容は適正だったとし」とある。当たり前である。要するに、学校に勤務して授業を普通に行うことに関して、教員免許の更新なんて何の関係もないのである。教員免許更新制って言ったって、誰もチェックしなければ誰にも関係しないのである。

 それにしても、制度が始まって以来6年目になるのに、いまだにこういうことがあるのか。はじめの数年には、各地で失職させられた教員がいたということは、このブログでも報告してきた。普通、その段階で(一応法律が施行されてしまってるんだから)、学校側で対策を講じるだろう。それがなかったというのも、かなりすごい。

 記事によれば「4人は授業から外れており、更新講習を受けるなどするという」とある。これにもビックリした。私立学校の場合、失職せずにいることもあると聞くが、大学付属でもそうなのか。「公務員」の場合、教育公務員は教育職として採用されており、「教員免許」が失効すれば職も失うという最高裁判例がある。それに基づいて、公立学校では一律に「失職」という対応をされてきている。(教員免許が失効しても、刑事裁判で有罪が確定したような場合とは違うので、「教育職」ができなくても「公務員」の身分は残るという考え方もありうるが、それは取らないということである。)

 筑波大は「国立」ではないのか。そうか、もう違うのか。「国立大学法人」という独立行政法人になって(されて)、「非公務員」になっているのか。公務員ではない、「法人職員」になっていたから、失職しないで済んだということだろうか。どうもそれも、おかしな話のような気がするが、「公務員」を削減しようとする政策がこういうところで関係してくるわけである。

 この筑波大ケースは何も物語っているのか。恐らく、他の「国立」や私立でも、実はこういうケースがいっぱいあるのではないか。そして、そのかなりの部分は、「手続きミス」である。その結果が「失職」と言うのは、明らかに制度設計がおかしすぎる。授業を担当するにおいて、何の支障もなかった教員が、年度途中で授業ができなくなる。もし「ずっと忘れていた」ならば何も起きないのである。不思議な制度を作ってしまったものである。
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