2月4日発売の週刊文春が菅首相の長男が勤務する東北新社が、総務省の高級官僚に高額の接待をしていたと報じて以来、問題がどんどん広がっている。国会で谷脇審議官が東北新社以外の接待はないと発言した後で、またも週刊文春がNTTも接待していたと報じた。何だか言質を取ってから罠に掛けたような感じもして、一体何が起こっているのだろうか感じる。
(総務官僚に処分)
女性初の内閣広報官を勤めていた山田真貴子氏も東北新社から高額接待を受けていた。菅首相は「続投」を目論んでいたが、山田氏は入院して辞表を退出した。「病気じゃ仕方ないよね」という体裁を繕っているが、首相の記者会見を仕切る広報官が自分の問題を追求されるのでは会見にならない。辞めざるを得なかったのだろう。首相の対応は「後手」になった。
首相も長男関連で官僚が処分されたことを「謝罪」した。長男の菅正剛氏はかつて第一次安倍政権で菅義偉総務大臣の下で秘書官を務めていた。総務省案件の「ふるさと納税」や「携帯電話値下げ」が菅首相の「手柄」である。最初に報道された接待は菅内閣発足直後の2020年10月~12月に4回行われた。総務官僚としては「菅首相の影」を拒否出来ないだろう。
東北新社は外国映画の配給やアニメ映画の製作などをいくつも手掛けてきた。昔の映画を見ると、今でも冒頭に東北新社と出ることがある。しかし今はいくつもの衛星放送チャンネルを持っている。2017年段階で東北新社の外資比率が20%超になって、法規上免許が取り消されるはずが、免許は子会社に引き継がれた。その時の最高決済者が総務省情報流通行政局長だった山田真貴子氏だった。東北新社は免許取得時期に合わせて多くの総務官僚を接待していた。山田氏の高額接待は2019年11月だが、「利害関係者と認識していなかった」のは疑わしい。
(東北新社の外資比率)
報道でよく出てくる「国家公務員倫理規定」というのは政令で、検索すれば全文が見られる。そこではまず「利害関係者」とは何かという細かい定義がなされた後で、「利害関係者から供応接待を受けること」を禁止している。また立食パーティなどを除き、「利害関係者と共に飲食をする場合において、自己の飲食に要する費用が一万円を超えるとき」は「倫理監督官」に届けるとなっている。だから山田氏は国会で「先方が利害関係者という認識の下に参加したものではなかった」と答えた。また谷脇審議官はNTTとの会合で5千円払ったと言っている。
要するに官僚というのは「文書の裏を読む」のが上手なのである。全額がいくらかは知らないけれど、「1万円以下の支払い」だったら問題ない。これを逆にとらえれば、高額接待でも1万円以下を払えば届け出が要らない。また「利害関係者」という認識が自分の頭の中に存在していなければ、おごってもらっても何の問題とも思わない。これは明らかに間違っている。
(山田前報道官の接待問題を報じるテレビ)
会社側は出席者が自己負担しているわけじゃないだろう。会社の「交際費」などで支出するんだろう。会社の利害と全く無関係の人物に高額の接待をしたら、それは「背任」である。会社は賄賂じゃないとしても、その官僚の「ご高説」をうかがい、親密な関係を築くことが社にとって意味があると思うから接待しているに決まってる。山田氏は「飲み会を断らない女」だそうだが、勤務時間外に自腹で飲むのは趣味の問題だが、高級官僚がおごられて平気なのは問題だ。会社の経費で落とせる人と飲んでるうちに感覚がマヒしてしまうのではないか。
総務省だけ書いたが、農水省でも鶏卵大手のアキタフーズの接待を受けていたとして官僚が処分された。この2省だけとは僕には思えない。たまたま他の案件(汚職事件や首相長男)があって問題化したが、他にもたくさん行われているのではないか。最近の東北新社の接待は菅内閣で起きたが、他の様々な問題(秋元司のIR汚職、河井夫妻選挙違反事件、アキタフーズの吉川貴盛元農相贈賄、NTTの総務官僚接待等)は安倍政権末期に集中して起こった。
国家公務員倫理規定の最初の方に「職員は、常に公私の別を明らかにし、いやしくもその職務や地位を自らや自らの属する組織のための私的利益のために用いてはならないこと」とある。森友、加計、桜を見る会などを思い合わせると、首相自らが公然と倫理規定に反していたことが判る。そんな政権がずっと続き、ちょっと前までは東京五輪、パラリンピック後の昨年秋にも解散・総選挙が行われて、安倍首相の下でまたも自民党が大勝利するのではないかと言われていた。その場合、再び自民党則を変えて「ポスト安倍は安倍」の声もあがるだろう。「安倍・菅」の官邸支配が続く限り、官僚の士気は緩みきって国民ではなく官邸だけを見て仕事していただろう。
つまり僕は、このような接待問題は「安倍長期政権」が生み出したものだと思う。と同時に、それだけでなく官界の中で複雑な思惑が交錯しているのだと思う。かつては旧大蔵省支配と言われ、安倍政権の下では「経産省支配」と言われた。菅内閣になって、経産出身者は退き総務省出身の広報官が生まれた。首相がねらう携帯料金値下げを担当する官僚のトップは谷脇審議官である。(現在の総務次官は旧自治省出身で、旧郵政省出身のトップが谷脇審議官。)それらは今まで、菅氏は元総務相だから政策的、人脈的に有利な分野だと思われていた。
しかし、それだけではないのかもしれない。「お金による支配」「産業(会社)による支配」「軍事や警察による支配」という従来の保守政治に止まらない指向が菅内閣に見られると思う。「デジタル庁」を作り、「マイナンバーカード」の普及を図る。デジタル技術、通信技術による国家支配こそ、中国に対抗して今後の日本が進むべき方向だと考えているのではないか。そうなると、今まで各省庁の中で重要性が高いとは言えなかった総務省の地位が格段に上昇する。その方向性に反発する向きも多く、政官界の中で「暗闘」が起きているのかもしれない。
(総務官僚に処分)
女性初の内閣広報官を勤めていた山田真貴子氏も東北新社から高額接待を受けていた。菅首相は「続投」を目論んでいたが、山田氏は入院して辞表を退出した。「病気じゃ仕方ないよね」という体裁を繕っているが、首相の記者会見を仕切る広報官が自分の問題を追求されるのでは会見にならない。辞めざるを得なかったのだろう。首相の対応は「後手」になった。
首相も長男関連で官僚が処分されたことを「謝罪」した。長男の菅正剛氏はかつて第一次安倍政権で菅義偉総務大臣の下で秘書官を務めていた。総務省案件の「ふるさと納税」や「携帯電話値下げ」が菅首相の「手柄」である。最初に報道された接待は菅内閣発足直後の2020年10月~12月に4回行われた。総務官僚としては「菅首相の影」を拒否出来ないだろう。
東北新社は外国映画の配給やアニメ映画の製作などをいくつも手掛けてきた。昔の映画を見ると、今でも冒頭に東北新社と出ることがある。しかし今はいくつもの衛星放送チャンネルを持っている。2017年段階で東北新社の外資比率が20%超になって、法規上免許が取り消されるはずが、免許は子会社に引き継がれた。その時の最高決済者が総務省情報流通行政局長だった山田真貴子氏だった。東北新社は免許取得時期に合わせて多くの総務官僚を接待していた。山田氏の高額接待は2019年11月だが、「利害関係者と認識していなかった」のは疑わしい。
(東北新社の外資比率)
報道でよく出てくる「国家公務員倫理規定」というのは政令で、検索すれば全文が見られる。そこではまず「利害関係者」とは何かという細かい定義がなされた後で、「利害関係者から供応接待を受けること」を禁止している。また立食パーティなどを除き、「利害関係者と共に飲食をする場合において、自己の飲食に要する費用が一万円を超えるとき」は「倫理監督官」に届けるとなっている。だから山田氏は国会で「先方が利害関係者という認識の下に参加したものではなかった」と答えた。また谷脇審議官はNTTとの会合で5千円払ったと言っている。
要するに官僚というのは「文書の裏を読む」のが上手なのである。全額がいくらかは知らないけれど、「1万円以下の支払い」だったら問題ない。これを逆にとらえれば、高額接待でも1万円以下を払えば届け出が要らない。また「利害関係者」という認識が自分の頭の中に存在していなければ、おごってもらっても何の問題とも思わない。これは明らかに間違っている。
(山田前報道官の接待問題を報じるテレビ)
会社側は出席者が自己負担しているわけじゃないだろう。会社の「交際費」などで支出するんだろう。会社の利害と全く無関係の人物に高額の接待をしたら、それは「背任」である。会社は賄賂じゃないとしても、その官僚の「ご高説」をうかがい、親密な関係を築くことが社にとって意味があると思うから接待しているに決まってる。山田氏は「飲み会を断らない女」だそうだが、勤務時間外に自腹で飲むのは趣味の問題だが、高級官僚がおごられて平気なのは問題だ。会社の経費で落とせる人と飲んでるうちに感覚がマヒしてしまうのではないか。
総務省だけ書いたが、農水省でも鶏卵大手のアキタフーズの接待を受けていたとして官僚が処分された。この2省だけとは僕には思えない。たまたま他の案件(汚職事件や首相長男)があって問題化したが、他にもたくさん行われているのではないか。最近の東北新社の接待は菅内閣で起きたが、他の様々な問題(秋元司のIR汚職、河井夫妻選挙違反事件、アキタフーズの吉川貴盛元農相贈賄、NTTの総務官僚接待等)は安倍政権末期に集中して起こった。
国家公務員倫理規定の最初の方に「職員は、常に公私の別を明らかにし、いやしくもその職務や地位を自らや自らの属する組織のための私的利益のために用いてはならないこと」とある。森友、加計、桜を見る会などを思い合わせると、首相自らが公然と倫理規定に反していたことが判る。そんな政権がずっと続き、ちょっと前までは東京五輪、パラリンピック後の昨年秋にも解散・総選挙が行われて、安倍首相の下でまたも自民党が大勝利するのではないかと言われていた。その場合、再び自民党則を変えて「ポスト安倍は安倍」の声もあがるだろう。「安倍・菅」の官邸支配が続く限り、官僚の士気は緩みきって国民ではなく官邸だけを見て仕事していただろう。
つまり僕は、このような接待問題は「安倍長期政権」が生み出したものだと思う。と同時に、それだけでなく官界の中で複雑な思惑が交錯しているのだと思う。かつては旧大蔵省支配と言われ、安倍政権の下では「経産省支配」と言われた。菅内閣になって、経産出身者は退き総務省出身の広報官が生まれた。首相がねらう携帯料金値下げを担当する官僚のトップは谷脇審議官である。(現在の総務次官は旧自治省出身で、旧郵政省出身のトップが谷脇審議官。)それらは今まで、菅氏は元総務相だから政策的、人脈的に有利な分野だと思われていた。
しかし、それだけではないのかもしれない。「お金による支配」「産業(会社)による支配」「軍事や警察による支配」という従来の保守政治に止まらない指向が菅内閣に見られると思う。「デジタル庁」を作り、「マイナンバーカード」の普及を図る。デジタル技術、通信技術による国家支配こそ、中国に対抗して今後の日本が進むべき方向だと考えているのではないか。そうなると、今まで各省庁の中で重要性が高いとは言えなかった総務省の地位が格段に上昇する。その方向性に反発する向きも多く、政官界の中で「暗闘」が起きているのかもしれない。