尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「日本維新の会」という「古い党」ー参院選比例区の党③

2022年06月29日 22時25分38秒 |  〃  (選挙)
 「参政党」「NHK党」を書いたので、続けて「日本維新の会」(以下「維新」と略)を書いてしまいたい。「維新」については、かつて「大阪維新の会」や「大阪都構想」について何度も書いたのだが、もうずいぶん前になるので覚えている人もいないだろう。なんでこの党が再び勢力を取り戻したのだろうか。「大阪都構想」が住民投票で2回続けて否決されたことで、もう存在意義を失ったのかと思っていたら、2021年の衆院選で大躍進したわけである。

 下のポスターにあるように、「身を切る改革、実行中」をうたうが、身を切りすぎたからか全国でコロナ死者が人口当り最多である。保健所を減らしすぎたのではないかと言われ、橋下徹元市長も認めたと記憶する。それに、テレビで「維新」を代表して政見を述べている松井一郎大阪市長は来年で引退すると公言している。今回の参院選で述べている公約に責任を持てるのだろうか。
(「日本維新の会」ポスター)
 「維新」に関しては以前から様々な疑問を持っているが、NHK党を調べていたら興味深い記述を見つけた。3年前に参議院に当選した立花孝志氏は、「議員会館にテレビを設置し、NHKと受信契約を締結した上で不払いすることを宣言」した。もう少し細かな記述があるのだが、それは省略する。それに対して、松井一郎大阪市長は「現職国会議員の受信料未払いをNHKが認めるなら、大阪市もやめさせてもらう」と述べたという。また吉村洋文大阪府知事も「現職議員が受信料を踏み倒すというのが許されるなら府も払わない」と述べたと出ている。この問題、結局どうなったか知らないけれど、そんなやり取りがあったと思い出した。

 この「維新」ツートップの発言は非常におかしいと思う。まず、受信料に関する立花氏の対応をどう考えるのだろうか。「正しい」と考えるならば、立花氏とともに「不払い」をするべきだろう。一方、「間違い」と考えるならば、立花氏がどうあれ「維新」は受信料を払うと言うべきだ。松井氏、吉村氏が言うのは、「あの子がズルしても先生が叱らないんなら、僕もズルしちゃうから」と駄々をこねている子どもと同じではないか。

 しかし、その問題と別にもっと重大な問題がある。立花氏が言っているのは、国会の議員会館のテレビである。だから、松井氏が「現職国会議員の不払いをNHKが認めるなら」「維新の国会議員も払わない」と言うのなら、理解はできる。しかし、松井氏や吉村氏が言うのは、「大阪市」「大阪府」が払わないというのである。政党は私的な存在だが、府市は地方自治体である。自分たちはたまたま選挙で選ばれて首長を務めるが、そこは「領地」ではない。自分たちの政治的方針で、公的なルールを守らないのはおかしい。(なお、災害対応が避けられない地方自治体がNHKニュースを見ないことはあり得ない。)

 このような「公的感覚の欠如」が「維新」の特徴である。「大阪都構想」もそうだし、2回やった「ダブル選挙」(府知事、市長選を同時に仕掛ける)もそう。公明党の支持を取り付けるため、衆院選で公明が出ている4小選挙区に「維新」候補を立てないのも、何だか小選挙区を「領地」のように考え「陣取り合戦」をする感じだ。かつて橋下市長が卒業式の君が代斉唱を「校長のマネジメントの問題」と述べたのも同じである。立場はいろいろあっても、学校教育はマネジメントの問題じゃないだろう。

 最近の問題では「核兵器の共有」論がある。これは安倍元首相が言い出したが、結局自民党内でも否定された議論だ。善し悪しを論じる前に、絶対に不可能である。そのことを当然「維新」も判ってるに違いないが、あえて掲げるのは安倍氏が掲げた政策なら支持する「超保守派」層有権者を取り込もうという策略だろう。NATOのような集団的防衛組織は東アジアにはない。個別に日米安保を結んでいるのに、日本に「核共有」を認めたなら、当然韓国でも認めよという議論になる。日本が率先してNPT体制を崩すと言うんだから、今後は日本が制裁の対象になりかねない。もちろん、そんなことぐらい判っていて、あえて票のために議論をもてあそんでいると思う。論外だけど、もし判らないで論じているならもっと重大だ。
(「核共有」をめぐる各党支持層の考え)
 これはかつて書いたのだが、「維新」は「問題のある言葉」である。「維新」というから、新しいと思うかもしれないが、実は「維新」というから「古い」のである。「維新」そのものは「これ新た」という新造語で、「明治維新」という官製用語である。人々が旧体制の崩壊を「御一新」と呼んでいたときに、上からの統制用語として「維新」と呼ぶようにしたのである。「大正維新」「昭和維新」「平成維新」と全部あったけれど、すべて保守や右翼の運動だった。だから「維新」と称した時点で、政治史的に自分は右ですと宣言したのと同じである。

 そういう「古い党」だからか、比例区候補を見てみると「昔の名前で出ています」が多すぎる。知名度の高い方で言えば、猪瀬直樹中条きよし青島健太松野明美などである。松野明美は54歳で若いけれど、元五輪選手だから活躍を覚えているのは昔の世代。(その後、熊本県議をしたから政治を知らないタレント候補とは言えないが。)他にも、後藤斎(民主党衆院議員4期を経て、山梨県知事1期)、松浦大悟(元民主党参院議員)、山口和之(元みんなの党参院議員)、木内孝胤(元民主党衆院議員)、井上一徳(2017年に「希望の党」から衆院に当選した)など、「元議員」をたくさん勧誘した。そう言えば、西郷隆盛5代目の子孫(西郷吉之助元法相の孫)、西郷隆太郎という人も出ている。(西郷隆盛総本家敬天会代表だそうである。)
(年収ごとの政党支持率)
 松井代表は政見で「自民党をピリッとさせる」などと主張している。それならば、立憲民主党が提出した内閣不信任案に賛成するべきだ。「岸田内閣は何もしてないから、不信任の理由もない」などと変なことを言ってたが、就任から8ヶ月「何もしてない」なら、当然「不信任」のはずだろう。しかし、実は「維新」の標的は自民党ではない。ホントは立憲民主党である。比例区でも、複数区でも、最後に立民を追い抜いて、「維新」が上回るのが真の目標だろう。共産党と「閣外協力」して政権をねらった立憲民主党を口汚く攻撃する「別働隊」が「維新」の存在意義なのである。

 気になるのは、安倍・菅元総理との関係が深すぎることである。そして鈴木宗男参院議員の「親ロシア」的言動も許容している。「核共有論」を含めて考えると、何だか「反米親ロ」的傾向が見え隠れする。岸田内閣がどのようになるかにもよるが、2025年大阪万博が終わってしまえば「維新」は存在意義を失うと思う。分裂して、強硬派は「弾圧」され、穏健派は自民党に吸収されていくのではないかと考えている。
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