『空飛び猫』のシリーズのほかにも、アーシュラ・K・ル=グウィン作の、
短い話があるのかなあと思い、図書館で探してみたら、こんな素敵な本に出会いました。

『いちばん美しいクモの巣』
アーシュラ・K・ル=グウィン
長田弘 訳
ジェイムズ・ブランスマン 絵
誰も住んでいないお城に、リーゼ・ウェブスターという名前のクモがいました。
このリーゼがお話の主人公です。ウェブスター一族は昔からこのお城で、他のクモたちと
ともに、廊下や壁や天井やいたるところに巣をかけ、ハエをとって暮らしてきました。
巣をかけ始めて3日目の夜、リーゼはつぶやきます。
「ときどきはすこしちがう模様にして、巣をかけてみたっていいんじゃないかしら。やってみよう」
はじめはうまくいきませんでしたが、糸の新しい結び方や新しいパターン、新しい形を
考え、試し、工夫して、リーゼは今まで、普通のクモが普通に作っていた巣とは、
まるでちがうデザインを作り出します。
他のクモたちは、リーゼの行いをすごいと思いつつも、ハエがつかまらなければ意味がないと、
リーゼに言いますし、当のリーゼもそれはよくわかっていました。クモにとって、巣を作る目的は、
ハエを捕まえること。そして、クモだって、食べなければなりません。どんな生き物も、おなじです。
従来のデザインとは違うもの。ハエを捕まえる機能が備わっていること。その上、
王さまの肘掛椅子にあったような、宝石のきらめきを巣の中にも取り入れたいと、
リーゼの思いはふくらみます。
リーゼにとっては、いまひとつ納得できない出来栄えの巣でしたが、壁の絵を真似たデザインは、
まるではじめからそこにあったタペストリーのようで、とても素晴らしいものでした。
ある日の午後、お城の掃除に来た2人の女性が、それを見つけます。
ドアのすきま風でほんのすこしちらちらゆらめいている、みごとなクモの巣をまえに、
2人の女の人は思わず立ちつくしました。
「ほんと、美しいわ」そうつぶやいたのは、最初の声の人です。
お城が美術館として生まれ変わったあとも、巣は取り払わずに、ガラスケースに入れて
保管しよう、ということに決まります。リーゼが作った「クモの巣」は「銀の織物」と
呼ばれるようになりました。しかし、リーゼにとっては大迷惑。
ガラスケースで覆われてしまっては、ハエを捕まえることはもうできませんから。
でも、最後は、巣を見て「美しい」と最初に言った女性の「ちょっとした気遣い」で、
リーゼは新しい世界へと出て行くことができ、こう思うことができました。
「これは、いままでにわたしのつくった、いちばん美しいクモの巣だわ」
新しいもの。今までにやったことがないもの。心がすこしでも、そっちへ傾いたなら、
こわがらずに前へ踏み出してみよう。
あ、きれい。心がすこしでも動いたのなら、その動きに従って、大きく目を開いてみよう、
受け入れていみよう。・・・読みながら、私はそんなことを思いました。
この本は、「詩人が贈る絵本2」というサブタイトルがついていす。
詩人の長田弘さんが選び、訳されたシリーズなのですね。カバー折り返し部分の紹介を
見ると、他にも 『子どもたちに自由を!』 『魔法使いの少年』 など興味をひかれる作品が
続いています。
短い話があるのかなあと思い、図書館で探してみたら、こんな素敵な本に出会いました。

『いちばん美しいクモの巣』
アーシュラ・K・ル=グウィン
長田弘 訳
ジェイムズ・ブランスマン 絵
誰も住んでいないお城に、リーゼ・ウェブスターという名前のクモがいました。
このリーゼがお話の主人公です。ウェブスター一族は昔からこのお城で、他のクモたちと
ともに、廊下や壁や天井やいたるところに巣をかけ、ハエをとって暮らしてきました。
巣をかけ始めて3日目の夜、リーゼはつぶやきます。
「ときどきはすこしちがう模様にして、巣をかけてみたっていいんじゃないかしら。やってみよう」
はじめはうまくいきませんでしたが、糸の新しい結び方や新しいパターン、新しい形を
考え、試し、工夫して、リーゼは今まで、普通のクモが普通に作っていた巣とは、
まるでちがうデザインを作り出します。
他のクモたちは、リーゼの行いをすごいと思いつつも、ハエがつかまらなければ意味がないと、
リーゼに言いますし、当のリーゼもそれはよくわかっていました。クモにとって、巣を作る目的は、
ハエを捕まえること。そして、クモだって、食べなければなりません。どんな生き物も、おなじです。
従来のデザインとは違うもの。ハエを捕まえる機能が備わっていること。その上、
王さまの肘掛椅子にあったような、宝石のきらめきを巣の中にも取り入れたいと、
リーゼの思いはふくらみます。
リーゼにとっては、いまひとつ納得できない出来栄えの巣でしたが、壁の絵を真似たデザインは、
まるではじめからそこにあったタペストリーのようで、とても素晴らしいものでした。
ある日の午後、お城の掃除に来た2人の女性が、それを見つけます。
ドアのすきま風でほんのすこしちらちらゆらめいている、みごとなクモの巣をまえに、
2人の女の人は思わず立ちつくしました。
「ほんと、美しいわ」そうつぶやいたのは、最初の声の人です。
お城が美術館として生まれ変わったあとも、巣は取り払わずに、ガラスケースに入れて
保管しよう、ということに決まります。リーゼが作った「クモの巣」は「銀の織物」と
呼ばれるようになりました。しかし、リーゼにとっては大迷惑。
ガラスケースで覆われてしまっては、ハエを捕まえることはもうできませんから。
でも、最後は、巣を見て「美しい」と最初に言った女性の「ちょっとした気遣い」で、
リーゼは新しい世界へと出て行くことができ、こう思うことができました。
「これは、いままでにわたしのつくった、いちばん美しいクモの巣だわ」
新しいもの。今までにやったことがないもの。心がすこしでも、そっちへ傾いたなら、
こわがらずに前へ踏み出してみよう。
あ、きれい。心がすこしでも動いたのなら、その動きに従って、大きく目を開いてみよう、
受け入れていみよう。・・・読みながら、私はそんなことを思いました。
この本は、「詩人が贈る絵本2」というサブタイトルがついていす。
詩人の長田弘さんが選び、訳されたシリーズなのですね。カバー折り返し部分の紹介を
見ると、他にも 『子どもたちに自由を!』 『魔法使いの少年』 など興味をひかれる作品が
続いています。