たった2つの音なのに、言ったわたしも、言われた誰かも、気持ちがすこしやさしくなって、くふっとしたり、きゅんとしたり・・・そんな極めつきのことばは、なんでしょう。なんだと思いますか?
『すき 谷川俊太郎詩集』
和田 誠 絵
好き という日本語ほど、短いのにインパクトがあって、前向きかつ肯定的で、まっすぐなことばはないんじゃないかなと、この本の表紙をみただけで、思ってしまいました。
書店では、黄色の帯が巻かれていて、「谷川さんから、子どもたちへのメッセージ。最新書き下ろし詩集です!! 詩のなかに、ぼくがいる。わたしがいる。」と書かれていました。
谷川俊太郎さんの書き下ろしの詩で、和田誠さんの絵 の本なら、もう迷うことなんか全然ないです。ろくに中味も見ずに買ってしまいました。
目次を開くと、1~5までの見出しがあって、「3 はみ出せこころ」に括られている5編の詩は、小学校の校歌として作られたようです。 たとえばこんなのがありますよ。
かんがえるのって おもしろい
かんがえるのって おもしろい
どこかとおくへ いくみたい
しらないけしきが みえてきて
そらのあおさが ふかくなる
このおかのうえ このきょうしつは
みらいにむかって とんでいる
(※校歌として歌う時は最後に学校の名前が入るそうです)
いいですね、ひらがなだけで、書かれた校歌。もう一度小学生になって、真っ白な気持ちで、勉強したくなっちゃいます(笑)。
ひとつだけ、この本の中の詩を載せたいないなあと思って・・すごく迷っています。なんだかもったいなくって、全部読んでないせいもあるのですが。
表題作の『すき』もいいし、最初の『きいている』も『いる』もとても好き。けれど、あえて「4 まり」の括りから選んでみました。
はこ
もしぼくがはこだったら
だれにもなにもいれさせない
からっぽがいいいつまでも
でもちきゅうのうえにあるのだから
からっぽはくうきでいっぱい
においもおともかくれてる
もしぼくがはこだったら
ふたはあけておいてくれ
みえないものをいれるために
いっしょにいたいひとにあったら
はこをきもちでいっぱいにする
「すき」がはこからあふれだすまで
谷川俊太郎さんの話題の続きなんですが、ほぼ日刊イトイ新聞 のGW特別企画で「谷川俊太郎質問箱」というのをやっていました。あらかじめ寄せられた質問に、毎日一つづつ答えていく形式で、13この質問とその答えを読むことができます。
質問12は、「自業自得で苦しい時、どうやってその苦しさに立ち向かっていったらいいのでしょう?」というものでしたが、こんなふうに答えていました。
苦しいのも生きている味わいのひとつだから、
苦しみのグルメになれるといいなあ。
苦味や渋みや刺すような辛さに、
かすかな甘みもまじっているその複雑な味を知ると、
喜びの味も深まるからね。
この質問には
古今東西のさまざまな宗教が答えを用意してますが、
それはあんまりあてにしないほうがいい。
お金取られたりするからね。
さすがですね、すごいです。なんかこの先、つらいことに遭遇しても、この言葉を思い出せば、なんとかやっていけるかも、と思ってしまいます。