prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「永遠の語らい」

2004年05月21日 | 映画
前半はヨーロッパ文明のルーツの解説、後半はフランス・イタリア・ギリシャの大女優の共演で、地中海クルーズの船を“世界”に見立てる作り。三人の国籍の違う女優たちが、それぞれの母国語で話して芝居が成立してしまうというのが面白い。蜷川幸雄の「オイディプス」(築地本願寺での平幹次郎主演版)では、ギリシャの女優にギリシャ語で台詞を言わせて日本語の芝居と共演させていたが、フィックス主体の演出とともにあからさまに“撮影された演劇”ぶりを見せている。

唯一参加している男=船長がポーランド系のアメリカ人で、ジョン・マルコヴィッチというアメリカ人には違いないけれどどこか異端を感じさせる役者にやらせている妙。ポルトガルの母娘が絡んでくるところから台詞が英語にまとまっていき、急転直下のショッキングなラストで“今の世界”を端的に見せる。

図式性を越えてロゴス=言葉・論理の力に対する確信を感じさせる作り。
ただし、ややイヤミ。
(☆☆☆★)


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「キル・ビル vol.2」

2004年05月21日 | 映画
今回は一作目みたいなけたたましさは影をひそめ、マカロニ・ウエスタン風にモノモノしいテンポが目立つ。どっちがいいの悪いのというのわけではなくて、いろいろある引き出しのうちの一つという程度の違いだろうが、いくらなんでも2時間20分はかったるい。
「サイレント・フルート」を持ってお久しぶりの登場のデビッド・キャラダイン。もともとB級アクションになぜかよく出ていて、「パルプ・フィクション」のトラボルタみたいなセルフ・パロディの面もある。
カンフー・アクションはチャンバラよりアラが目立つね。
ヒロインが生き埋めになって、さあどうなるという所で修行のエピソートが始まるあたりの話法はちょっといい。
ヒロインを“natural born killer”と呼ぶところがあったが、タランティーノが原案を書き オリバー・ストーンが監督した同題の映画があった。タランティーノが怒ってクレジットを拒否したというシロモノ。撮影は同じロバート・リチャードソン。やたら色々な画調のカットをとりまぜるあたりは似ている。
エンド・タイトルで皆さんほとんど席を立たず。「恨み節」が(おそらくデジタル・リマスターで)流れるせいか。thanksのところに石井聰互の名があった。
(☆☆☆)


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