prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ハリエット」

2020年06月13日 | 映画
時あたかもアメリカで黒人男性が警察官に殺された事件に対する抗議デモが続きトランプ大統領が対立を煽るツイートをして問題が大きくなっている時期の公開になった。映画の製作時には直接は想定しなかっただろうが、類似の事例はこれまで何度も繰り返されていたから意外性はもちろんなかっただろう。

黒人奴隷と自由黒人との差異が、こういう自由な黒人もいたのだというエクスキューズではなく、人が人を「所有」する理不尽と罪、断絶とを明確にする。

自分も脱走し故郷の奴隷を脱走させるヒロインが、白人の奴隷主にヘブライ人をエジプトから脱出させた預言者モーゼと呼ばれるのが女と黒人との二重の蔑視と偏見を物語る。

ヒロインはかなり神がかっていて、子供の時に頭を殴られたせいでか意識がときどき飛ぶのが神の導きのようでもある描き方。

黒人が白人の宗教(おおもとは違うが)であるキリスト教を信仰しているのはいくらか違和感はある。マルコムXが途中からイスラムに帰依するようになったのもわからなくはないが、これまた少し違和感はある。では何ならいいのか、アフリカの原始宗教かというともこれまたムリがある。
しかしキリスト教とはいっても白人のものを鵜呑みにするのではなく、ゴスペルといった歌として神の恩寵といったものを独自のものを表現しているのわかる。

白人奴隷主たちも弱小なものは経済原則の中で追い詰められていくのが皮肉。
奴隷制が、特にアメリカのそれが資本主義の一環であることが明らかにされている。