ゲームのスペースインベーダーが出たのが1978年というからもう40年近く前、この映画が公開されたのが1986年なのだから、いいかげん邦題にするには証文の出し遅れだったろう。原題はThe Invation From Marsで、1953年(日本公開は「スター・ウォーズ」のヒットにあやかって1979年)の同じ原題の「惑星アドベンチャー スペース・モンスター襲来」のリメイクだが、どちらも邦題には恵まれていない感じ。
出てくる小学校がメンジーズ小学校というのは、明らかに「惑星アドベンチャー」の監督のウィリアム・キャメロン・メンジーズからとっている。「風と共に去りぬ」の第二班監督・特殊効果担当でもある人。
インベーダーのデザインがどう見ても「Dr.スランプ」(1980~84)のニコちゃん大王というのは困ったけれど、デザインはスタン・ウィンストンという一流どころ。なんでしょ。
前半、見慣れた人たちがまったく別人のようになる、というのは「盗まれた町」('56)などとも共通する50年代の冷戦期の共産圏=洗脳の恐怖から来たものだというが、このリメイクでのトビー・フーパーの演出だと主人公の両親の顔が影に入ると直感的に人外になったのがわかる、といったあたり、何やら黒沢清監督みたい(製作時期からいって逆だが)。
ズームアウトと前進移動、あるいはその逆の組み合わせによる、大林宣彦いうところの逆ズームがただ話しているシーンで使っているのが、「ポルターガイスト」でいかにもここぞというドラマチックなシーンで使っているのと逆手なのが妙におもしろい。ら
ラストに近づくにつれて、その「ポルターガイスト」で組んだスピルバーグの「未知との遭遇」に画が似てシチュエーションが逆になる。
オスカー女優が悪ノリしているというのか、小学校の女教師役のルイーズ・フレッチャーがインベーダーに取りつかれる前から主人公の男の子(「パリ、テキサス」のカーソン・ハンター)をいじめるわ、取りつかれたらカエルを咥えるわ、しつこく追いかけてくるわ、すごい顔で喚くわ、しまいにはインベーダーに食べられるわ、もう大暴れ。
カレン・ブラックが良い女教師をやっているというのが意外。こちらが怖い役をやっても不思議ないと思うのだが。
「宇宙戦争」そのままにインベーダーを「理解」しようとしてメチャクチャなやられ方をする学者など、いくらなんでも50年代そのまんまの描き方でちょっと笑ってしまう。
製作会社がキャノン・フィルムというのが何やら懐かしい。