娼婦たちがプラカードを持って労働組合よろしくデモをするなんてシーンがある。労働者には違いないわけだが。先日見た「五番町夕霧楼」(1963)でも団結して交渉するシーンがあった。
彼女たちが大挙して引っ越していくラストでロシア民謡が流れるあたり、社会主義的なカラーが当時はかなり一般的だったのかなと思わせる。
菅原通済本人が字幕つきで登場するので、どんな人なのか調べてみたら小津安二郎のタニマチ的な実業家にして政治家。小津作品に出演もしている。麻薬・売春・性病の三悪追放を唱えて、そんなこと言えるのも自分が女遊びを堪能したからだろうなどと陰口を叩かれた。
売春禁止法が公布されたのが1956年、施工が57年で、この映画の公開が1964年だから、溝口健二の「赤線地帯」の1957年がもろに法律に制定をめぐって動いていた時期なのには及ばないが、タイムリーな企画だったとは言える。