prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「私にふさわしいホテル」

2025年01月12日 | 映画
舞台になるホテルのレトロな雰囲気が、文学賞の舞台裏というちょっと古めかしい設定とシンクロしており,服装もレトロなままモダンになっている。

文学賞絡みのてんやわんやというと筒井康隆および鈴木則文「大いなる助走」があるけれど、あれほど毒々しくはなくて万事かわいい。

山の上ホテルといったら最近いろいろあって明治大学が購入することで収まったわけだが、その実物を見られる。タイミングがいい.。

あたりまえみたいだけれど、のん、田中圭、滝藤賢一の主演三人のセリフが聞き取れる。最近日本映画のセリフが聞き取りにくいこと珍しくないのです。





「アルマゲドン・タイム ある日々の肖像」

2025年01月11日 | 映画
監督脚本のジェームズ・グレイの自伝的作品だというが、彼が自己を投影しているであろう少年が成長して映画監督になるのかというとまったく違う。
課外授業で美術館に行き、カンディンスキーの抽象画を見て目覚めるところは描かれるが、そこから美を追及する道に入るかというと、そんなことはない。

メインになっているモチーフは人種差別で、主人公の少年はユダヤ人、その友人は黒人で、被差別者の中にもランクはあって、そのつもりはなくても友人の犠牲の上にかろうじて塀の中に放り込まれるのを免れた後ろめたさを抱えて生きていかなくはならない。

はじめの方に出てくる学校が明らかに貧乏人向けで、転校する先が裕福な生徒ばかり、描かれてはいないが相当に両親が経済的にムリしているだろうなと思う。

タイトルが人名の頭文字も小文字で綴られている。そのつつましい感じがふさわしい。

アンソニー・ホプキンスが自分の苦労話を苦労を滲ませないで語るのがいい味わい。




「カルキ 2898-AD」

2025年01月10日 | 映画
製作費100億円というのはそんなものかなと思う。ハリウッド映画や配信で何百億というのが珍しくなくなっていると感覚がマヒしてくる。

インド製のSFというのは珍しいような、インド自体がSFみたいな国というと失礼かもしれないが。

見ているとプラバースとアミターブ・バッチャンという、インドらしい濃ゆい顔と身長2メートル半の老人(え?)がメインで出てきて、これがどっちが善玉でどっちが悪玉なのかはっきりしない。どちらも善とも悪ともそう思えば思えるので、初めて見ると結構戸惑う。

エンドロールが出かけたあたりでいったん止まり、続編の予告がかった場面が出るというのは正直あまりありがたくない。きちっと終わらせてよ。





「モアナと伝説の海2」

2025年01月09日 | 映画
なんだか話に芯がないように思った。何を達成したのか乗り越えたのかわかったようでわからない。
さらに続くらしいけれど、それで中途半端になったというわけでもなさそう。





「胸騒ぎ」

2025年01月08日 | 映画
「スピーク・ノー・イーブル 異常な家族」のオリジナル。
前半のやりとりはイライラするのは一緒。ホスト夫婦が礼節を守っているつもりなのか悪気がないのかそういうふりをしているのか、つかみどころがないまま神経を逆なでしてくる。

主な舞台になる孤立した家のありようはかなり違っていて、こちらはオランダにあるから、ごく平坦な見晴らしのいい土地にある。

リメイクで何かおかしいと気づくきっかけになる写真を見るのを父親から娘
にしたのは改善といっていいだろう。
その他、リメイクではかなり脱出の手のあれこれを工夫していたのが逆にわかる。





「ビーキーパー」

2025年01月07日 | 映画
ジェイソン・ステイサムが養蜂家なのだけれど、ハチに刺される、いつ攻撃されるかわからない恐れに絶えず直面しながらしのいでいるというイメージなのだろう。
ハチみたいに捉えどころがない相手よりは、敵がはっきりしている分やりやすい。

大統領が女という設定なのにトランプが現実に大統領になる時期に見るとなんだか違和感を覚える。
まあ息子がマザコンで犯罪者というのが味つけにはなっているが。





「ボストン1947」

2025年01月06日 | 映画
日本の植民地支配を受けていた時期の韓国で日本選手としてオリンピックに出場しなくてはいけなかった屈辱を舐めた韓国選手たちが、時を経て後進の選手のコーチとして出場するのに今度はアメリカの選手として出場しなくてはいけないというドラマチック・アイロニーが痛烈。

ここでは取り上げていないが、1947年といえば朝鮮戦争勃発の3年前だ。
あえてそれには触れていない感がある。

イム・シワンのマラソンのフォームが見事。





「ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い」

2025年01月05日 | 映画
冒頭、ヒロインのヘラが馬を駆って小高い丘に降り立ち、豚のモモ肉のハムみたいな塊を鳥に投げ与えるところで、鳥がそのモモ肉全体を丸呑みするのに嘴の中に収まってしまうくらい巨大なことがわかる。
ただし、この後この巨大な鳥はあまり出てこない。
沼から森を頭に乗せた巨大タコみたいなのも出てくるが、これまた一回こっきりしか出てこない。
考えてみるとファンタジー色というのはこういう巨大生物以外あまり出ておらず、全体とすると戦争ものみたい。
ただし、ヒロインは戦うヒロインとはいえず、ありがちなフェミニズムにも傾いていない。

「指輪物語」The Lord Of The Rings の初の映像化というのは実はアニメで、それもただのアニメではなく実写映像の輪郭をトレースする技法、ロトスコープを採用したラルフ・バクシ監督の1978年作。トレースしたからリアルなのかというと、かなり不気味の谷に落ち込んでいる感があった。

今回のアニメ化にあたっての神山健治監督のインタビューを引用すると「まず絵コンテとして1回、その後コンテムービーに合わせてプレスコ(※映像より先に音声を録音・収録すること)をして2回。それをもとにモーションキャプチャーを使用して全シーン撮影、そのデータを使って次はカメラを置いてCGシーンで全カット撮影、それを元に手描きによる作画で全カット演出。3年間で5回くらいこの映画を通しで撮ったイメージです。 」
まあ、えらい手間がかかっています。





「ウルフズ」

2025年01月04日 | 映画
あれと思ったのは、オオカミ=wolfの複数形はwolvesと覚えていたからで、wolfsとなると「wolfの三人称単数現在」と辞書を引いたら載っていた。一匹狼の群れ、というべきか。作中で言っているが、ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピットともに一匹狼というわけね。それが最終的にバディ(相棒)になる話。初めからバディじゃないのとも思うが。

いまどき、ポケットベルなんて通信手段に使うとは思わなかった。80年代の産物だもの。

ラストの銃撃戦、相手はもっといっぱいいたと思うのだが、いつの間にか減ってしまう。
「オーシャンズ11」の縮小再生版といったところ。





あけましておめでとうございます

2025年01月01日 | 映画
本年もよろしくお願いいたします。

2024年12月に読んだ本

2025年01月01日 | 
読んだ本の数:20
読んだページ数:4667
ナイス数:2

読了日:12月03日 著者:敷村 良子




読了日:12月06日 著者:西 研




読了日:12月07日 著者:濱口竜介




読了日:12月07日 著者:山田洋次,黒柳徹子




読了日:12月08日 著者:南とめ




読了日:12月08日 著者:羽根田 治




読了日:12月09日 著者:山折 哲雄




読了日:12月12日 著者:秋本治




ピンク映画の監督の新藤孝衛が、衆議院議員・新藤義孝の実父というのにちょっとびっくり。 国立映画アーカイブがピンク映画のフィルムを収蔵しているというのは、国会図書館が本の収蔵にあたって取捨選択しないようなものか。
読了日:12月13日 著者:鈴木義昭


読了日:12月13日 著者:藤本 タツキ




読了日:12月14日 著者:若宮 總




読了日:12月16日 著者:萬屋 健司




読了日:12月20日 著者:村上 春樹




読了日:12月24日 著者:エドワード・W. サイード




読了日:12月24日 著者:エドワード・W. サイード




読了日:12月26日 著者:けら えいこ




読了日:12月26日 著者:諸星 大二郎




読了日:12月29日 著者:チャールズ・M・シュルツ




読了日:12月31日 著者:深田 晃司



読了日:12月31日 著者:マイケル・ケイン







「ライオン・キング ムファサ」

2024年12月31日 | 映画
ムファサとスカー(タカ)の兄弟がいかにして仲がよかったのが不仲になったのかを描く前日譚。
ときどき前作(といっても2Dアニメと3DCGアニメの二通りある)のコメディ・リリーフキャラが揃う現代のパートが挟まり、その時点では子ライオンのシンバが親の代の話を聞くという構成になっている。

どこまで発達するのだろうと思わせる、CGで骨格からつくるのから始まって筋肉をつけ皮膚を張り付けて毛を生やし、さらに光を当てて徹底的にリアルな画像に仕立てる技術は壮観。背景も実写では逆に不可能なくらいの再現度を誇る。
ただリアルすぎて2Dアニメでは使えたマンガ的なデフォルメが乏しく、ライオン同士があまり見分けがつかない。何よりスカーの顔に傷がついているという一番目立つ違いが最後に来ている。

ムファサとスカーはハムレットの父王と叔父のクローディアスからとったらしいが、逆にクローディアスの役の裏設定に応用できそう。

監督のバリー・ジェンキンスは実写でもカラーリングを徹底的に施した「ムーンライト」が出世作になったわけだが、広い意味のデジタル技術の応用という点ではつながっているということになるか。

2Dアニメと3DCGアニメの前作二本で共通してムファサの声をアテたジェームズ・アール・ジョーンズ(今年2024年の9月9日に亡くなった)に対する献辞が冒頭に出る。ここで声の出演をしているわけではないのだが、功績全般に対する敬意と受け取った。

吹き替えでなく字幕版で見たので、セリフと口の動きが合っているのがわかる。ライオンのセリフというのも妙だが、英語圏の映画の作り手は「デイブ」の昔からリップ・シンクにこだわるのだね。





「コット、はじまりの夏」

2024年12月31日 | 映画
冒頭、草むらに何か転がっているなと思うと主人公の女の子で、それからしばらく顔が写らない。場面が室内に移ってベッドの下で横になっている顔が写ったかと思うと、すぐおねしょしているのがわかる。
そういった調子の端正で静かな画と運びの中で、おねしょや父親との不和などノイズを入れてくる手際がいい。

最初から女の子が心を開くのではなく、徐々に抑えながら開いたとも思わせないで気が付いたら開いているとわかる。
撮影が素晴らしく、ただの水たまりのはずが心の深淵に見える。






「パン・タデウシュ物語」

2024年12月30日 | 映画
いかにもな大作。
上映時間の長さに贅沢な美術衣装、色彩の美しさと艶やかな光、戦闘シーンの隊列の様式的な動きとリアリズムの並立。さらにセリフがやたらと朗々として声を張っている。
アンジェイ・ワイダとしては黒澤明の「影武者」「乱」にあたるようなものか。
可笑しいことに日本映画(の鬼門)ばりに熊まで出てきた。

ワイダの多彩さを証しだてる一編。





「映画 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」

2024年12月29日 | 映画
中田秀夫監督と知って、一応Jホラーの代表選手がなんでまたと思いかけたが、考えてみるとホラー以外のスリラー寄りだったりはっきりドラマ寄りだったりといろいろ使い分けているのであり、これがコメディだったりしたらはっきり裏の顔と捉えることもできるだろうが、職人的に多才なところを見せていると考えた方がいい気がする。

上白石萌音が悪役やってるとこ、話は古いがむかし佐伯日菜子が「らせん」でいきなり文字通り化けたのを思いだした。