prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「憂國 」

2017年03月04日 | 映画
三島由紀夫原作・製作・脚本・監督・主演。
三島の割腹自殺のせいもあって夫人の希望によりフィルムが焼却されてまったく見る機会がなかったのが、2005年になってネガが発見され見られるようになったという数奇な運命の30分の短編。

ここでの表現の目玉はやはり臓物がはみ出るところまで見せる三島自身が演じる切腹シーンと、その後に続く鶴岡淑子が作法通り喉を突いてやはり自死するシーンということになるのだろうが、白黒でなければ見るに堪えなかっただろうには違いないけれど、それが「美」的かというと結構微妙。

実をいうと冒頭で上手くない書き文字の英語でタイトルが出てくるのに違和感を覚え、さらに掛け軸に書かれた文字があまり上手くない(と思うぞ)のにも首を捻った。能舞台のように抽象化された白黒の映像美は狙っていても、文章の美とはまた違う書き文字そのものの美には無頓着というのも不思議な感じだった。

三島は腕だけ毛深かったりするのだけれど、妻役の鶴岡淑子の髪の毛に光が当たったアップを割と唐突に入れてきているが妙に目立ったりしている。プロの映画人ではないので型にはまらず趣味嗜好がもろに出ている感。

三島は五社英雄監督の映画「人斬り」でやっていた田中新兵衛役で、不正の疑いをかけられると一編の言い訳もしないでいきなり腹を切ってしまうシーンを演じていて、死後見ると異様な生々しさを出していた。
他人が撮った切腹だと一瞬で人を撥ねつけるようだったのが、自分が撮るとまことに長々しくしつこい。
表現の瞬発性としつっこさ、ごってりした色彩と簡素な白黒と対照的だが、自分で監督したこちらの方が「本当」なのかというとそうとも言えない。

余談ながらポール・シュレイダー監督、緒形拳主演のアメリカ映画「MISHIMA」が劇場公開はおろかビデオも国内版は出ていない事情がどんなものなのか知らないが、まあ輸入盤で見られたしセリフは日本語なので鑑賞に支障はない。




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