prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「リコーダーのテスト」

2024年07月17日 | 映画
「はちどり」のキム・ボラ監督がそれに先立つ2011年に発表した28分の短編。

フィックスを主とした、空間把握に優れた画面構成がすでにここに見られる。
セリフに頼らず、淡彩のスケッチのようでニュアンスが豊か。
ボロいラジカセと、どういうわけか象嵌か何かの立派な細工が施された台に乗ったテレビが1988年のソウル・オリンピックを伝える。

主人公の小学生低学年のキム・ウニがリコーダーを家に忘れて電話で母親に持ってきてと頼むが容れられず、教室でバンザイみたいなポーズをとっている(↑)罰を受ける冒頭からなんともいたたまれない感じ。

キムはともだちのハンナの母親がノックしてから部屋を出入りするのに驚くので、逆に自分の家族が出入りする時ノックしないのがわかる。ハンナは育ちが良くてピアノも弾く。
対照的にキム一家は狭い部屋をムリに分けて寝起きしているもので、ウニはリコーダーを練習する場所もない。

ハンナというのはキリスト教圏でもある韓国らしい名前。チャップリンの母の名前であり、「独裁者」のヒロインの名前でもある。たしかヘブライ語で“慈しみ”といった意味。

子供は女男女の三人で、長男は二番目なのにおそらく儒教社会では特権的な地位を占めている。ここでは単に威張っているだけなのが「はちどり」になるとそれがかえってプレッシャーになることになる。
大きくなったら横暴な暴力亭主になるだろうなとも思う。