端的にいって、1929年に書かれた小林多喜二の原作小説が現在のワーキングプアが搾取されている姿にストレートにつながるのか、といったらかなり疑問、というよりはっきりこじつけと思え、特に「団結」して資本家に対抗するという処方箋は日本に限っても組合の腐敗(今の民主党はそれに根を生やしている)による労働貴族こそがむしろ弱小労働者を搾取しているように思えて、とてもそのままでは通用しない。
すべての男たちのバックにある「貧困」にしても高度成長以前の日本社会の貧乏ぶりとそれに立ち向かう全盛期の日本映画のリアリズムの迫力にはとても及ばないし、それが作り手もわかっていてか、いやに大きな歯車が並ぶ船内の工場など、どうも中途半端に表現主義的なセットによってリアリズム離れを試みているが、ではどこに向かうのかというとよくわからない。
(☆☆☆)