“地上より永遠に”(“ここよりとわに”と読ませるらしいが、“ちじょうよりえいえんに”と打たなければ変換できない。
ぼくが中学生の頃、西荻窪駅北口の通称“映画通り”にあった3軒の映画館のどれかでやっていた。
ポスターのタイトルに“ここよりとわに”と小さくルビが振ってあったので、そういう風に読むのだと思った。
“水野晴郎のDVDで見る世界名作映画”によると、1953年の製作である。
ぼくが中学生だったのは1962年から1964年頃のことだから、再公開(の2番館)だろう。
あのころは、“エデンの東”が再上映されたり、戦後初期の映画の再上映のじきだったのかもしれない。
“エデンの東”は1964年がジェームス・ディーンの没後10年のメモリアルだったが。
さて、“地上より永遠に”のほうは、真珠湾攻撃前夜のハワイのアメリカ軍基地における「いじめ」がテーマである。
他の部隊から転属してきたモンゴメリー・クリフトはボクシングの強者だったが、友人を失明させてしまったことから二度とボクシングはやらないと決めていた。
ところが、部隊対抗のボクシングで優勝して出世したいと思っている上官は、ボクシングをやらないモンゴメリーに理不尽なしごきを加える。
同じ部隊のフランク・シナトラもイタリア系だということで差別にあっている。
ある時、営倉でリンチを受けてシナトラが殺されてしまう。怒ったモンゴメリーはシナトラを殺した上官をナイフで刺し殺して、脱走する。
クラブでホステスをしながら金を稼いで本土に帰ることを夢見ている恋人のドナ・リードに匿われるが、日本軍の真珠湾攻撃を知って基地に戻ろうとする。しかし、不審者と疑われて衛兵に射殺されてしまう。
モンゴメリーに好意的だった下士官バート・ランカスターと、将校の妻デボラ・カーとの不倫のエピソードもある。
最後には、デボラ・カーとドナ・リードがカリフォルニアに向かう客船の船べりに並んで立ち、レイを海に投げる。
レイが岸辺に向かえば再びハワイに帰ってくることができるが、沖に向かえば二度と戻ることはできないという言い伝えがあるという。
レイは沖に向かって流されていく。
それが“地上より永遠に”の意味らしい。
ぼくらの世代には“家のママは世界一”で知ったドナ・リードも、デボラ・カーも美しい。
こういう女優はいつからいなくなってしまったのか。そっちのほうが、ぼくにとっては“地上より永遠に”である。
* 写真は、“地上より永遠に”(原題は“From Here to Eternity”、フレッド・ジンネマン監督、1953年。“水野晴郎のDVDで見る世界名作映画”キープ)のケースより。