豆豆先生の研究室

ぼくの気ままなnostalgic journeyです。

佐野洋『検察審査会の午後』

2009年08月16日 | 本と雑誌
 
 8月16日(日) つづき

 夜、12時過ぎに風呂から上がって、NHK-FMラジオを聴きながら、読みさしだった佐野洋『検察審査会の午後』(光文社文庫)を読む。

 かつて新潮文庫から出ていて絶版になっていたのを、裁判員制度の導入をきっかけに、版元をかえて再版したもの。

 よく調べて書いてある。検察審査会の事務局や検察審査員経験者からかなり取材をして書いたそうで、刑事訴訟法や裁判法の教科書に書いてあるような、通り一遍の検察審査会の説明からはうかがい知ることのできない制度の運用の実態まで知ることができた。

 しかし、そこは作家の手になる小説。あくまでも検察審査会の「午後」の話である。
 主人公は、バツ一の中年高校教師。検察審査員の補助員に選任され、不承不承出席するが、審査員の中に、かつての恋人と声がよく似た(声というと、大原麗子を思い出すなあ・・・)女性を見つける。
 45歳の彼女もまたバツ一であることが分かり、毎回審査会の終了後に、裁判所前の喫茶店でお茶を飲む仲になる。

 ・・・と、要するに、中年男の「恋」物語である。
 一線を越えられないまま、審査員の任期が終わってしまうが、ラストで、女のほうから温泉旅行の誘いが届く。
 恋は中年になってもはかなく終わらせておいたほうが良かったのではないか。

 * 写真は、佐野洋『検察審査会の午後』(光文社文庫、2008年)の表紙カバー。

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ボワロ=ナルスジャック 『探偵小説』

2009年08月16日 | 本と雑誌
 
 8月16日(日) 軽井沢、5日目。

 日曜なので、勉強はお休みにする。

 軽井沢に置きっ放しにしてある本の中に、ボワロ=ナルスジャック『探偵小説』(白水社、クセジュ文庫)を見つける。
 ボワロ=ナルスジャックも好きな作家の一人で、創元推理文庫やハヤカワ・ポケットミステリーなどで何冊も読んだ記憶がある。
 その後は、鼻について読まなくなった。

 この本を読んだ記憶はなかったのだが、何ヶ所か傍線が引いてあるところをみると、読んだらしい。
 裏表紙の裏に、「1977年7月10日(日) 藤木英雄氏葬儀の朝に、高井戸駅広和書店で」と書き込みがある。
 編集者時代に何度も原稿を書いていただいた東大の刑法の藤木先生のご葬儀に参列した折に購入したらしい。

 ぱらぱらと中身をめくってみると、僕が大好きだったウィリアム・アイリッシュを非常に高く評価しているのが目にとまった。
 そもそも、ぼくは、中学校の図書館で見つけた、あかね書房かポプラ社版の少年推理全集で読んだアイリッシュの『恐怖の黒いカーテン』で推理小説に「はまった」。
 表紙扉の次に黒のパラフィン紙が挿んであった。

 中学校の同級生だった校條諭君の『スーパー編集長のシステム小説術』では、視点のぶれた例としてアイリッシュを挙げていたが、アイリッシュ・ファンにはそんなことは全く気にならない。

 * 写真は、歩ワロ=ナルスジャック『探偵小説』(白水社、クセジュ文庫、1977年)の表紙。

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