これまでの記事の落穂ひろい的な写真を何枚か。
最初は、アルダス・ハクスリー「辞書の落書き」への落穂ひろい。
軽井沢に置いてあった『ドガ・ロートレック』(河出書房、世界の美術18巻、1964年)から。前にも書いたが「座右宝刊行会・編集」とある(冒頭の写真はそのカバー)。
解説を書いている田近憲三氏によれば、ドガとロートレックは、どちらかが「デッサンの巨匠」、どちらかが「デッサンの天才」と呼ばれているそうだ。いずれにしろ、二人ともデッサン力が素晴らしいらしい。納得できる。必ずしも「踊り子」つながりという訳ではなかったようだ。
巨匠と天才はどちらが偉いのか、分からないが、巨匠は努力して頂点に立った人、天才は才能を持って生まれた人という感じがする。そうだとすると、ロートレックが「天才」だろう。
もっとも、ハクスリーによれば、ロートレックが描いたのは、精神ないし生命のリズムであって、人間の外形そのものではなかった。天才のデッサン力による外形の描写があればこその生命のリズムということか。
美術学校時代のロートレックは、教師から「実写」できていないことを注意されたというが、天才の天分は、一介の美術教師(といっても芸術院会員だった)には理解できなかったのだろう。
ロートレックは父親が鷹狩りを趣味としていたので、少年時代から鷹の絵を描いていたという話だった。上の写真は、成年になったロートレックの「鷹匠」。
「辞書の落書き」には馬の絵が多かったようだが、鷹の落書きもあったようだ。ただし、ロートレックは鷹狩りをはじめ、外での遊びは好まなかったというから、鷹を描いたとしても記憶で描いたものだろう。
ロートレックが、北斎はじめ日本の画家の影響を受けたことはハクスリーにも出ていたが、彼が日本のきものを羽織った写真が同書に載っていた。
「赤い風車」のホセ・ファーラーのメイクがいかにロートレック本人に似ていたかを示すためにも、山高帽をかぶった自画像の方が適当だったかも。
2020年8月14日 記