バルザック全集にも挿絵が欲しかった、角川文庫版の『ゴリオ爺さん』には挿絵があったのに、という書き込みをした際に、子どもの頃に読んだ岩波少年文庫の挿絵のことを書いた。
思い出に残る岩波少年文庫の挿絵は、ドラ・ド・ヨング『あらしの前』、『あらしのあと』に挿入されていたものである。第二次大戦前後の、のどかかなオランダの田舎の風景と、そこで育ったオランダ少女のアメリカ兵への恋情が軽やかなペン画で描かれていた。
これは、ひょっとするとバルザックではなく、ニコラス・フリーリング原作『雨の国の王者』が、テレビドラマ「ファンデル・ベルグ警部」としてBSミステリー・チャンネルで放映されることを書いた際の余談だったかもしれない。
リンドグレーンの『名探偵カッレくん』シリーズも(シリーズと言っても3作だけだが)お気に入りだった。(上の写真)
こちらはスウェーデンの子どもたちの生活が描かれていて、ぼくのスウェーデンへの憧れは、彼の地に「性革命」が起きたり、社会民主党政権が誕生するよりはるか前、この本を読んだときに生まれたと思う。
1964年の東京オリンピックに出場したハグベリ選手へのあこがれも以前に書き込んだが、彼女もスウェーデン選手だった。そういえば、1969年、予備校時代のぼくが憧れていた五木寛之にも「北欧小説集」という副題のついた短編集があった(先日断捨離してしまったので、題名は分からない)。「ソフィアの秋」が舞台となったソフィアへの憧れを抱かせたほどには、北欧への思いは強まらなかったが、まだスウェーデンをはじめとする北ヨーロッパが憧れの対象だった最後の時代だった。
その後のオランダ、スウェーデンの現実は、ぼくの憧れを粉砕してしまった。
「ファン・デル・ファルク警部」や「マルティン・ベック警部」(マイ・シューバル、ペール・ヴァールー共作)シリーズ、その他のオランダ、北欧ミステリーに描かれた彼の国の現実は目を背けたくなるものだった。
ただし、ぼくは以前にオランダの安楽死法制を調べたことがあるが、一定の要件のもと、医療者による安楽死を認めるオランダ法制を否定しない。立法化によるものだったか、検察の不起訴裁量権の行使だったか、安楽死の合法化が独特だったように記憶する。オランダの安楽死を紹介した新書で調べようと探したが、見つからない。ゼミで安楽死をテーマにしたゼミ生に貸したところ返ってこなかったのか、あげてしまったのかもしれない。
2020年8月15日 記