「建築でたどる日本近代法史」の第2回は旧篠山裁判所、神戸地方裁判所篠山支部庁舎である。
出典は、日本経済新聞1982年(昭和57年)12月23日付の記事で、「神戸支社・前田記者」という署名がある(上の写真)。
見出しは「名所新景 最古の裁判所庁舎 “衣替え” 篠山歴史美術館(兵庫県)」となっている。丹波篠山(ささやま)に残る旧裁判所庁舎の物語である。
明治24年裁判所として建築され、昭和56年6月まで使用されてきた、この建物が、場所を少し移動させ、正門の向きも変えて、この年(1982年)の4月に美術館としてリニューアルすることになったという。取り壊し論もあったようだが、町民の存続運動と、国土庁の1億円の資金援助によって存続することになったそうだ。
記事によると、展示品の大部分は篠山藩にゆかりのある焼物や出土文物らしいが、4つの展示室のうちの一室は、かつての法廷がそのまま保存されているという。
どんな事件があったのか、いつか判例集で「神戸地裁篠山支部」の判決を検索してみよう。
明治24年の建築という記事が事実ならば、前回の旧松本裁判所は明治41年の建築だから、篠山裁判所のほうが古いことになる。
篠山裁判所も旧松本裁判所と同じく、瓦屋根の建物で、正門も瓦葺である。
「ローカル色豊かな美術館ではあるが、町民あげて育てようしている熱意が伝わってくる」と記者は結んでいるが、記事から40年以上が経過して、21世紀になり、令和となった現在でも建物は残っているのだろうか。健在であることを祈る。
追記
・・・と書いて心配になったので、丹波篠山市のHPを覗いてみた。丹波篠山市立歴史美術館は今も健在で、旧法廷もしっかり保存されていた。法廷の写真も載っている。
歴史美術館のHPによると、「西南の役を鎮圧した明治10年(1877年)に、旧豊岡県支庁跡に篠山区裁判所が設置され、その後、明治23年(1891年)に府県制が公布されると同時に、区裁判所は地方裁判所となり、翌24年に 新しい木造の庁舎が完成した。
現在、(美術館の)本館として使用されているのはこの建物で、 裁判所の木造庁舎としては最古級のものといわれており、建設当時の姿は、瓦をのせた白壁の塀で取り囲まれた敷地の南正門を入ると、左手に執行吏役場、 右手に公衆控所があり、正面に両翼を広げた長さ約40mの木造平屋建ての本館が控える堂々たる構えのものであった」とある。この法廷は、テレビ映画「裸の大将」のロケにも使われたという。
新聞記事に添えられた写真よりもかなり立派な門構えの写真がHPには載っており、1980年代よりもさらに発展した様子がうかがえる。
2023年6月15日 記