雨、9度、96%
昨日の昼頃から雨が降り出しました。今も降っています。私が日本に帰ってきて以来、初めての長い雨降りです。祭日のせいもあってか、車の音も少なく家にいると雨音ばかりが聞こえます。静かな静かな雨音です。
処が変われば雨音だってこんなに違って聞こえます。まだ少し冷んやりする空気の中、座って庭を眺めます。 蹲の石がすっぽりと濡れていい風情です。主人が庭の隅に取り置いていた鬼瓦を綺麗に洗って並べてくれました。
この家の屋根には一体鬼瓦がいくつ付いていたことやら知りません。一番大きな鬼瓦は、庭の中央で東を向いています。こうして雨に濡れた鬼瓦、何かもの言いたげに見えてきます。昔の瓦です。雨に濡れるとその色が新しい瓦とはまるで別物のように艶を帯びてきます。
冷んやりとした空気の中、お香を焚いてみました。松栄堂の「姫の香」です。四季を表す小さなお香です。 火お起こした炭の上で静かにくゆらします。桃色の春の花は梅の香でしょうか。一つ一つ匂いを楽しみます。緑色は新緑の夏の香り。黄色ははて、秋の何を表しているのか。少し乾いた香りです。灰色の冬の香りは凛としています。
この同じお香を香港の家で楽しんだことがありました。湿度の高いしかもコンクリートの家の中で香った時とは全くその香りが違います。あの時、私が見ていたのは高い高い高層ビルでした。雨に濡れた石や芽吹き出した庭の緑ではありません。