チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

表札

2016年07月31日 | 日々のこと

曇り、28度、79%

 以前はよく玄関に「日本赤十字特別社員」の下に苗字のある表札を見かけました。今だにその「日本赤十字特別社員」がどんなものか知りませんが、一軒家は兎も角、集合住宅では表札がかかっているところが少なくなったように思います。名前を覚えられて事件に巻き込まれたりしない為の用心にフルネームの表札は見られなくなりました。

 香港では全く表札を見ません。大邸宅が並ぶところでも、小さな集合住宅でもあるのは所番地だけ。集合住宅のずらっと並ぶ郵便受けにも部屋番号だけ。そんなこととは知らず、30年前の我が家の引っ越しの荷物の中には表札が入っていました。結局この表札を香港の移り住んだ家にかけることはないままです。しかも、今では息子は自分の家庭を持っています。

 我が家には神棚ではありませんが、毎日お水を上げる場所があります。食器棚の上です。家のお守りと一緒にこの表札は食器棚の上に置かれています。日本にいた頃住んでいた家はあるお宅の離れでした。大家さんと出入りの門は一緒、門柱には大家さんのポストがあります。我が家のポストはその横に建てられた白いペンキ塗りのポストでした。郵便屋さんが困らないようにと作ってもらった表札です。苗字だけ、主人の名前だけ、色々考えましたが家族三人の名前を入れてもらいました。玄関のドアとポストに2枚作ってもらったのに、手元に残っているのはこの1枚だけです。

 時々この表札を手に取って、この表札がかかっていた時代の生活を振り返ります。山のように夢がありました。頗る元気でした。そして、何にも世の中のことを知りませんでした。思い出しただけで、急に元気になります。身体の中から力が湧いて来ます。主人と一杯けんかもしました。花火をしていてシュロの木に火が移り大騒ぎしたこともありました、猫が子供を産みました。犬は多摩川を泳いでいました。夏には伊豆にキャンプに行きました。アルバムではありません。一枚の表札が思い出を呼び起こしてくれます。

 もうかけることのない表札です。息子夫婦が心の中にこんな表札を持って生活してくれるようにと思います。

 

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暑中見舞い

2016年07月30日 | 日々のこと

晴れ、29度、89%

 やっと全国的に梅雨が明けたと聞きました。随分遅い梅雨明けです。この知らせを待って重たい腰を上げるのが、暑中見舞いを書くことです。今年の立秋は8月7日、香港から日本まで郵便物は4、5日所によっては1週間かかります。昨日は半日座って暑中見舞いを書き上げました。

 年賀状と暑中見舞いは年上の方や主人が仕事でお世話になってる方だけに出します。以前は親しい友人知人にも出していましたが、友人達はクリスマスカードだけにしました。手書きです。年賀状を書くのに丸一日座っていなければなりませんでした。

 お出しする方のお名前を紙に書き出します。ずっと座っているといっても、主婦ですから細々とした用事で立ちます。うっかり書き漏れがないように、同じ方に2枚出さないように、今までの失敗から書いた方のお名前の横にはチェックを入れて置きます。

 手帳からお名前を書き出した時、あらと気付きます。年上の親戚の数がここ数年でぐっと減ってしまいました。それもそのはず私達夫婦ももう直ぐ還暦を迎えます。小学のときから暑中見舞いや年賀状を書きました。いえ、書かされました。学校の先生、親戚の者に書くように母から葉書を手渡されました。ちっとも楽しいとは思えません。年賀状も暑中見舞いも嫌な仕事のひとつでした。ですからかれこれ50年、毎年毎年、年賀状、書中見舞いを書いて来たことになります。嫌で仕方なかったこの作業、もうすっかり身に付いています。書く枚数も30代、40代の頃は年々増えて行きました。主人も私もお付き合いの幅が一番広がった頃です。

 こうした季節の挨拶、型通りになりがちですが出すが相手の方の顔を思い浮かべながら添える言葉を考えます。ご無沙汰の方もいますのでお顔を思い出すことは楽しい時間となりました。イヤイヤ書いていた50年前とは違います。「この暑い夏を無事にお過ごしください。」という言葉が心から出て来ます。「お目にかかれる日を楽しみにしております。」という言葉も是非もう一度お会いしなくてはという思いに変わって来ました。

  中国の発明家の記念切手を貼りました。エアーメールのシールも貼りました。「JAPAN」も書き忘れがありません。よしとポストに入れました。

 今では仕事ではありません。心から季節のご挨拶。心からお元気でいてくださいの暑中見舞いです。皆さんも今からの夏本場、体調を崩されませんように。

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私の好きなミニバスのおばさん

2016年07月29日 | 香港

晴れ、28度、84%

 香港のバスや電車は日本とちょっと違います。バスも電車も二階建て、16人乗りの小さなバスが街を行ったり来たり。この小さなミニバスも赤と緑があって、緑のミニバスは路線バスです。ミニバスは2階建てのバスの行けない小さな道も小さな村にも連れて行ってくれます。我が家の住所の道にはこのミニバスしか通っていません。坂を上がって山沿いの道です。ミニバスのおかげで、暑い夏、重い荷物を持っていてもこの近辺の人は生活出来ます。

 緑のミニバスルート56番、一番私がお世話になるミニバスです。バスもミニバスも以前は運転手さんはみんな男性でした。この56番に女性の運転手さんが現れたのは10年ほど前でしたか、当時はまだ夜遅くまで仕事をしていましたので、このミニバスを見ると走って飛び乗り家に帰ります。女性の運転手さん、まるで普通のおばさんです。運転も普通、トンローワン、ワンチャイと車の多い道を走ります。チリジリにパーマをかけた髪型、化粧っ気もなく無愛想なおばさんです。私は運転手さんの真後ろに乗るのが好きです。次第にこのおばさん運転がうまくなりました。そして、髪型が変わりました。私物のバックが偽物のヴィトンになりました。腕時計が偽物のシャネルになりました。眉毛も細くしてお化粧もするようになりました。でも、無愛想、時に鼻歌なんぞ歌っています。ところが横入りする車や運転がヘタクソな自家用車には窓を開けて怒鳴ります。

 久しぶりにこのおばさんのミニバスに飛び乗りました。 56番のミニバス、人気路線ですので時にはずらっとバス停に人が並びます。乗りそびれること屢々ですから、見たら走る癖は抜けません。おばさんの後ろにどっかと座ります。おばさん運転の腕がますます上がっています。判断が早い上に、アクセル感がとってもいい。まるで私まで一緒にブレーキやアクセルを踏んでいるような感じです。でも、この10年相変わらずお客には無愛想です。腕にはシャネルの腕時計、夏ですからねカラフルなストローのバスケット。そして相変わらずマナーが悪い車に怒鳴ります。写真では見え難いのですが、室内のミラーにロザリオがかかっています。きっとおばさんクリスチャンなのでしょう。

 無愛想で威勢が良くて運転がうまいこのミニバスのおばさん、私は大好きです。どうか無事に運転してください。

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崎陽軒のシュウマイと千葉の落花生

2016年07月28日 | 日々のこと

晴れ,27度、87%

 主人はひと月に一度ほど東京に出張に行きます。今回は成田着、成田発。戻って来る日は午前中、湘南で仕事でした。昼前に湘南を出て成田に向かいます。途中、横浜を通ります。主人は横浜を通ると必ず崎陽軒のシュウマイを買います。いつもは長期保存のきく小さな真空パックの箱です。ところが今回は箱が違います。家に戻るなり、シュウマイを冷蔵庫の入れるように言われました。

 そのまま休みましたが、どうもシュウマイの箱の大きさが違うのが気になります。夜中に起きてシュウマイの包装紙を取りました。 次の日が賞味期限の真空パックでないシュウマイでした。そういえば前回真空パックを買って来たときに、味が昔とは違うとグチグチ言ったの私です。冷蔵庫に箱を戻して休みました。でも、まだ気になることがありました。「もしかしたら。」と思います。またしても起き出して、冷蔵庫に向かいます。箱の蓋をとって大笑い。ありましたよ、ありましたよ。

 「ひょうちゃん」です。陶器のお醤油入れ。真空パックのシュウマイには「ひょうちゃん」は付いていません。久しぶりに見る「ひょうちゃん」。しかも犬の散歩をしている「ひょうちゃん」です。この「ひょうちゃん」いろんな種類が随分我が家にも溜まっていました。息子が高校、大学と香港に戻って来る時には、崎陽軒のシュウマイを買って来ました。お土産ではありません。自分が食べるためです。「ひょうちゃん」沢山溜まりました。お醤油を使いきると箸置きに使っていました。あんまり沢山でしたから、今は整理して、 これだけ。犬の散歩の「ひょうちゃん」を見て大喜び。それにしても親子とは食べる好みが似ているものだなあと関心します。

 主人は成田でこれまた絶対に買って来るものがあります。落花生です。しかも観覧車マークの落花生。 千葉の落花生は有名です。有名なのには理由があります。美味しいのです。大きさも立派ですが、深い甘みを感じる落花生です。食べ始めると止めるには勇気が要ります。止まりません。主人が殻をとってくれますから、この時ばかりは無心で食べます。この落花生から作るペースト、ピーナツバターも香り味共に文句なしの美味しさです。羽田の方が便利なのですが、この落花生のために成田に行きたいほどです。

 落花生はまだ日持ちがします。崎陽軒のシュウマイを昨晩は頂きました。真空パックのとはお味がチョイと違うように感じます。真空パックより美味しいかな。主人の東京土産の定番をお見せしました。

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モモさんとお守り

2016年07月27日 | もも

曇り、27度、86%

 モモさんは誰にでもしっぽを振る愛想のいい犬ではありません。お散歩に出れば、「モモ。」と声をかけてくださって、わざわざ腰を落としてモモさんを撫でてくださる方達もいます。そんな方達にしっぽのひとつでも振って挨拶してくれたらいいのにと思います。でも、自分から身体をすり寄せて行く人はほんの僅か、どちらかというと知らん顔を決め込みます。観光客も多い我が家の周辺、時には、写真まで撮ってくださる人もいます。いつものようにカメラも無視。そんなモモさんに日本の友人達は、お守りを送ってくださいます。

 無愛想モモさん、3つもお守りを持っています。 ありがたい事です。お守りが沢山あると、神様がけんかするなど言う方もいますが、私は3つあれば三倍守ってもらえると信じています。本当はモモさんの身に付けておきたいのですが、首輪も持ちませんので、 ひとつの袋に入れてお散歩用のバックにいつも入っています。

 帰国したとき、お神社にも詣でます。年が改まった時は、必ず身内の者へのお新しいお守りを頂いて帰ります。そういえば何時頃からかペットのためのお守りを置いているお神社も出て来ました。ペットのお守り、ちゃんと目にしているのにモモさんの為にとは皆目思いつきません。主人も家族にお守りを買って来ますが、モモさんにはありません。モモさんにお守りを頂く度にありがたいと思う以上に、こうして他所の家の犬や猫にまでお守りをと思ってくださる人の心配りの深さに関心します。お守りをずらりと並べて売っている前で、私は自分の家族の顔ばかり思い浮かべています。モモさんの頂いたお守りを見る度に自分のそうした思い遣りのないことを恥ずかしく思います。

 ブルーのお守りはペットのためではありません。モモさんが後ろ足が弱いとご存知の方からです。しかも、このお守りをくださった方達、皆さん私よりもお若い方です。息子ほど歳が離れた方もいます。皆さんのお気持ちのおかげで、モモさん、今年は後ろ足が立たないなんてことがありません。そういえば、後ろ足が立たなくなった時にご自分の家の古い犬用のバギーを香港まで送ってくださった方もいます。

 60歳になろうというのに、今だに自分のごく身近なことしか見ていないと、このお守りをみる度に頭が下がります。暑い日が続く香港で、朝晩モモさんがヨイショヨイショとお散歩に励むことが出来るのも、みなさんのおかげです。ありがとう。

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フローズンヨーグルト

2016年07月26日 | 菓子

晴れ、28度、86%

 「かき氷」を食べさせてくれる日本の喫茶店が香港にも出来ました。こんなに暑い香港ですから大流行りかと思えば、意外に食べに来るのは日本人が多いと聞きます。香港にも「かき氷」らしきものがあります。縦長のグラスにまず粒あんを入れてその上にクラッシュした氷をグラスの縁まで入れます。そこに甘いココナッツミルクを注ぎます。「紅豆冰」(ホンダオベン)といって底の小豆とココナッツミルクが合わさるとなかなかオツな味がします。

 我が家は氷りかきがありません。かき氷の代わりにシャーベット。種無し西瓜やモモを氷らせてミキサーでガーッとシャーベットにするのもいいのですが、氷らせる前に食べてしまいます。そこで我が家の夏場の定番は、なんといってもフローズンヨーグルトです。

 まだアイスクリームメーカーを買う前からフローズンヨーグルトは作っていました。冷凍庫に入れたり出したりしながら、ハンドミキサーでかき混ぜます。アイスクリームほど滑らかな舌溶けを気にせずに作れるところが魅力です。しかも、材料を混ぜるだけです。ヨーグルト、ミルクもしくは生クリーム、お砂糖、レモン。我が家は  欠かさずコアントローをたっぷりと入れます。ぐっと大人の香りになります。甘みを少なくすると、いくらでもさっぱりとお口に入ります。暑い中、家に向かうとき、冷凍庫のフローズンヨーグルトが頭の中でグルグルと舞っています。家に着くや、さあ食べましょう、 あれ?さっきまで寝てた方がテーブルの向こうに。今年は何回このフローズンヨーグルトを作るかな。

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石澳(セックオ)香港

2016年07月25日 | 香港

晴れ,27度、84%

 香港島の南には南シナ海が拡がっています。海岸沿いには幾つかの海水浴場があります。長いイギリス統治下には、島の南側は白人もしくは金満家の中国人が住んでいました。海に向った高台には、白い瀟洒な家が見られます。

 観光客も訪れる赤柱(スタンレー)を過ぎ東に車を走らせると、石澳という村に行き着きます。村に入る手前には小さなゴルフ場があります。小さな入江になっているこの石澳も海水浴場のひとつです。香港に来た時、息子は小学4年生でした。来たのは三月、新学期に合わせてやって来ました。初めての夏休み、ホームリーブはありません。海外旅行なんて行けるお金もありません。まだ数ヶ月の香港生活、地元の生活に慣れてもらいたいと思います。そこで、毎日息子を連れて行ったのがこの石澳です。

 石澳は水がきれいでした。人も殆どやって来ません。バスを乗り継いで行くその途中も山を越えますから楽しみでした。海に面しているのに、この村の人は漁をしません。そのせいか、魚の匂いのしない海辺の村です。

 以前とは違って、この石澳の海水浴場は人が多く行くようになりました。急に、石澳に行って見ようと思い立ったのは昼前、車で行けば夏休みで駐車場がもう一杯のはずです。そこで、昔のようにダブルデッカーを乗り継いで行きました。昔はダブルデッカーはクーラーなんか付いていませんから、2階に乗っていると狭い山道を走るバスの窓から道沿いの木の枝が入って来ます。なんともダイナミックなバスでした。

 案の定、途中で警察が自家用車の乗り入れを禁止しています。 昔変わらぬバス停ですが、夏休みの間は海水浴場の前までバスが入ります。私、泳ぎに来たのではありません。バスを降りて、左手に進むとこの石澳の村に入ります。 海沿いですから、こんな背の低い家が並んでいました。 村道を抜けて坂道にかかります。坂道を抜けると岬の先に着きます。この岬にかけて、 豪邸があります。香港のお金持ちの別邸です。ここにまで海水浴客の車が並んでいます。

 戻って海水浴場に行って見ました。 カラフルなビーチパラソルです。パラソルを貸してくれる店もなかった頃は、木陰で休みました。30年近く前はポツポツと人が泳いでいて、村の放し飼いの犬も泳いでいました。

 久しぶりに砂浜を歩きました。昔と砂が違います。サラサラの小粒の砂です。香港の砂浜はシーズン前になると砂を何処からかもって来て足すそうです。何処の砂かしら、地元の砂ではありません。息子と来ていた夏、お昼ご飯は毎日ここでした。 林家園、洒落たお店になってバーガーなどを食べさせてくれるようですが、昔は麺屋さんでした。一杯10ドルもしない地元の麺を食べていました。美味しかった。

 香港の暑い夏が好きです。蒸し暑く、何処までも抜けるような空。私の香港の夏です。

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胸のつっかえ

2016年07月24日 | 日々のこと

晴れ、28度、84%

 胸に何かつっかえた重苦しい状態が数日続きました。病気ではありません。精神的なものです。年に何回かこんな胸の中がすっきりと晴れない日がやって来ます。原因がはっきりしていることもあれば、何か分からないこともある。朝走って帰って来るとすっきりしていることが殆どですが、時には長居を決め込む胸のつっかえもあります。この歳ですから、年老いた者への心配、子供達の心配、自分たちの健康と胸に抱えることが多くなるのは当たり前のことです。出来るだけ胸に詰まっているものを軽くしてやりたいと思います。

 そういえばここ数年、声を上げて泣いたことがなかったなあと気付きます。いえ、子供の頃から泣く時はぐっと堪えて嗚咽するタイプです。家の中で「オイオイ。」と声を出して泣きまねをしてみました。途端に声を出して笑ってしまいます。泣きまねをしても声を出して笑っても胸のつっかえは取れません。心配性ではありません。クヨクヨすることもありません。とにかく胸に何かがつっかえて灰色の雲がかかっているようです。

 2日前、FBをスクロールして見ていると黒い犬の顔が大写しになりました。キャプションを読むと、闘病の末、昏睡状態のまま逝ってしまった犬の亡くなった時の顔でした。少し目を開いていました。でも、その目は苦しんだ様子もなくじっとこちらを見ています。その写真をどれくらい見ていたでしょうか、その犬の目をどの位見ていたでしょうか。会ったことのない犬です。痛い苦しい時期を過ぎ、静かに死を受け入れた小さな犬の目です。私の頬には涙が後から後から流れます。涙が止まるまでそのまま座っていました。

 動物はじたばたせずに死を受け入れます。小さい時から何度もその瞬間に立ち合いました。小さな黒い犬の亡くなった時の目が何を私にくれたのか、涙の跡を拭いて立ち上がった時には胸のつっかえがすっかりなくなっていました。

 これからも時々胸が塞がるようなことがあると思います。そんな時、いつも何かが私の心に響いてくれて洗い流してくれます。その何かに出会う、今回は亡くなった小さな犬の真っ黒な瞳でした。

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苔玉

2016年07月23日 | 

晴れ、28度、85%

 深い緑の苔が好きです。日本の家の庭にある蹲いの石には、小さい頃は苔が生していました。小さな池の側、古い梅の木の下にあるその石は手水にも使いますが、石そのものの形よりも苔に心奪われていました。庭の手入れを顧みなかった母が逝く頃には、庭は鬱蒼とした荒れ果てた庭に成り果てました。この蹲いの石はカラカラに乾いて苔が付いていたことなど誰も分からないほどになりました。

 子供心に何故苔が好きだったのか、きっとあの緑の色と苔の姿に魅かれていたのでしょう。「苔玉」が日本で流行り始めたのは数年前でしょうか、丸い苔ボールにいろんな植物が植えられています。その形のかわいいさ、手頃な大きさに思わず手が出ます。

 日本の流行は、時間をかけて香港に上陸して来ます。先日訪れた太子の花市で、「苔玉」を見つけました。苔玉を売っている店は日本の園芸店とつながりがあるようです。日本人のスタッフの人を見かけます。花のスペースの奥には珈琲のコーナーまで出来ました。店を入った途端、まるで日本のお花屋さんの雰囲気です。日本からの鉢植えの珍しい木も置かれています。 黒松の盆景は日本円にして20万円を超す値がつけられています。この黒松の根本にも苔が生しています。苔だ盆景だというと侘び寂びの世界ですねといわれそうですが、そんな小難しいことではなく、苔を見る、盆景の姿を楽しむ取りも直さず心が和むことではないかと思います。

 香港人の若いお嬢さんがこの苔玉を何枚も写真に収めていました。そして顔を上げてにっこりします。レンズを通してみる苔玉に何かを貰ったような顔でした。

 私、大きな苔玉を計画しています。手になんて乗りそうもありません。家の庭にある蹲いの石にもう一度苔を生やすつもりです。時間も知恵も必要ですが、昔のあの緑を取り戻したい一心です。 それまでは蔦で我慢してください。

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水羊羹

2016年07月22日 | 菓子

晴れ,27度、86%

 お羊羹三昧。とらやの京都限定版のお羊羹に始まって、葉山の日影茶屋の甘夏のお羊羹、日本から離れた香港でそんな贅沢な時間を過ごします。お羊羹も様々だなと思いながら、主人は芋ようかんが好きなのではないかなと思ったり、私が14歳の時に逝った父は大の水ようかん好きだったなあと思い起こします。亡くなった母は餡ものが大好きで、その母を見舞う時には香港で和菓子を作ってそれを持って飛行機に乗りました。飛行場から直行で母に届けます。その母にも、もちろん随分前に亡くなった父にも私が作る水羊羹だけは食べさせてあげれませんでした。水羊羹は冷凍出来ません、日持ちがよくありません。

 簡単な和菓子がすぐ作れるように、冷凍庫には三種類のあんこの作り置きがあります。漉し餡、粒あん、白餡。漉し餡と寒天と少しの葛があれば水羊羹は出来上がります。寒天ですから常温で固まります。お昼前に作って三時のおやつには充分冷えた水羊羹の出来上がり。モモさんにも上げたいし、沢山食べたいので甘さは控えめに作ります。

 友人が教えてくれた冷たく冷やした水で点てたお抹茶と一緒です。 水羊羹の面にスプーンやお皿の銀線が写り込んできれいです。手を付ける前にそんな水羊羹を見ながら父にも母にも食べさせて上げたかったと思います。こんなお茶の時間もいいものです。

 お羊羹三昧。これでお仕舞いと言いたいのですが、実は超大物がまだ控えています。いずれまた。

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