晴れ、29度、79%
一時期、白い器が基本だとしきりに言われていた頃がありました。洋食器ならホテル仕様の真っ白な一揃い、また和食にも洋食にも使える無印で売っているような白い食器です。生憎、主婦歴38年のこの私、そのありがたい言葉に背を向けてきました。白い特に磁器の食器は、清潔感と緊張感があり好ましく思います。と、手に取ってみるのですが、私の料理の技量では、お皿様になりかねません。ヘタクソでも料理あってのお皿です。
私が育った家庭は、殆ど料理をしない母でしたが、土ものの食器ばかりがありました。それが嫌で嫌で、ひとり生活が始まると、まず集め始めたのが、磁器の和食器です。染付け、絵付け、見るばかりか求めた器に何を盛ろうかと考える楽しみもありました。まだ38回しかお正月を自分で調えていませんが、特にお正月に向けての食器選び心が弾みます。いつの間にやら、和食器も洋食器も自分の料理の背丈にあったものが揃っています。料理の量加減、彩りを考えると、どの器と即座に決まります。
お客様を迎えるときばかりではありません。毎日主人と二人だけの食卓が、少しでも楽しければとの思いです。日本のように食材、花や木から季節感をもらえない香港に住んでいます。ですから反って、季節を意識することもあると感じます。和食、洋食ばかりではなく中華だって、エスニックだってと、欲張って料理をしても、手持ちの食器のあれにとすぐに手が伸びます。
二人だけの食事のときでも、やや大皿に盛りつけて好きなだけとっていただきます。暗い食卓は嫌ですが、黒の土ものの器の懐の深さに助けられます。ザックリと盛り付ける、しっかりと受け止めてくれる。頼もしい器です。見出し写真の片口は、24センチほどのやや大振りのものです。黒は、緑も白も思いのほか映えます。真っ白な磁器は持ちませんが、粉引きのまろい白の器に盛り付けたときとは、存在感の大きさは黒の方が勝ります。
黒の器は、 この他に塗りの黒。片口以外の3つの器はイタリアのペロションさんのものです。そうそう、黒の塗り椀に持った真っ白いご飯は、これ以上無いと思うほど美しく見えます。
ホテル仕様の白い洋食器は、ホテルの清浄感、真っ白のテーブルクロスに真っ白なナプキン、そしてピカピカのシルバ−のカトラリーがあって初めて、その持ち味が際立つように思います。洋食器には真っ黒はありません。そんな時、ペロションさんの薄手の黒を何処かに置くと、テーブルの上が引き締まります。
黒い土ものの器はお勧めです。