小雨,26度、85%
昼間は30度を超す香港です。そして,相変わらずムシムシと湿度も高いのですが,ふとした時に秋を感じます。晴れた昼間の空と海の色、外に出た途端に出会った風の匂い。蝉はとっくに鳴きません。早朝は下草の虫たちの合唱が始まりました。夏が終わらないのかと心配するほど暑い日が続いていたのに、間違いなく秋がやって来ています。
そんな気配を感じてか,主人がお香を炊いて欲しいと言います。この香港で,たとえ空調が効いた部屋でも夏の盛りにはお香が苦しく感じます。私など夏の間はアロマを瓶からクンクンと嗅ぐだけでした。
お香はいつも用意しています。香炉をどこにやったかしらと探していると,主人が、 こんな物を持って来ます。香炉じゃないの?私は大笑い。我が家の蚊取り線香を炊く器です。中国の物で、本来は冬に手を温める為の物です。まあ,香炉には違いありません。 お香を炊く物も様々。コーンを乗せる,一本立てる。私の実家の古いトイレには小さな床の間があって,一本線香が灯っていました。父も母も香のかおりが好きな人だったなあと,思い出します。
お香も色々、頂き物もたくさんです。主人など,銀座の裏通りを歩いていて,香港にまで電話して来ます。何かと思えば,初めてのお香屋さんを見つけたと,どれにしようかね?と電話先。まだ,あるわよといっても買って来てくれるのは目に見えています。昔と違って,お香のかおりも色もバラエティーに飛んでいます。選ぶのも楽しみの一つです。 この「姫の香」というお香,火をつけるお香ではありません。灰の中に炭を入れその熱で温めて香りを立たせます。空薫「そらだき」です。四季にちなんで4色,それぞれの形も可愛い京都のお香屋さんの「姫の香」です。
先日,実家の仏壇に亡くなった父が買って置いた中国のお香がありました。50年以上前のお香ですが、まだ香ります。お香は中国、インドからやって来た物でしょうが、その香りといったら,全くと言っていいほど違います。インドのオイリーな香り,むせるような匂いです。中国のは乾いたほこりのようなお香のかおりです。もし,お香の道がインド、中国、日本と通っているとしたら,徐徐にその香りも風土に合わせて変わって来たのだと思わせます。日本のお香の灰はきれいですが,インド、中国のお香の灰はボソボソ。作り方にも違いがあるのでしょう。
部屋の片隅にお香のかおりが溜まっています。身が引き締まるような冬の空気の中では,お香のかおりはもっと研ぎ澄まされます。ゆるゆると立ち上るお香の煙、時間がゆっくり流れます。