雨、12度、90%
先週、義母を美容院に連れて行きました。パーマとカラーをするためです。施設から一歩出るとお天気も良く、車の窓から垣根に咲く山茶花が見えます。1年近くも入院していた義母にはまさに自由な時間だったと思います。美容院の帰り、自宅に寄って服をたくさん持ち帰りました。日暮れが早くなっています。施設のお夕飯に間に合うように連れ帰りました。
それから3日ほど施設に出かけずにいました。施設に本当に馴染むまでは頻繁に連れ出さないほうがいいと教えられたからです。里心がつくとも言われました。どのアドバイスも納得します。施設に出向かなくても、冷蔵庫の食べ物が気になります。洗濯物は今回は業者にお願いしています。「ちゃんと戻って来てるかしら?」でもわざと電話もしませんでした。
義母の家、つまり主人の実家は今は住む人がいません。時折、義母のお使いで行く折に雨戸を開けてルンバを回します。入所が決まった時に庭には赤いガーベラが一輪咲いていました。施設の部屋を義母を迎える準備の最後にその一輪を切って持って行きました。長く咲いてくれました。美容院から送った義母の部屋のガーベラはすでに黒ずんでいました。
数日ぶりに義母を訪れます。「そうだ、庭の椿が膨らみ始めてた。」と主人の実家に向かいました。でも椿の蕾はまだ硬いまま、何にもない庭です。ぐるっと見回すと、先日より小さなガーベラが咲いていました。背も低く、花もふた回り小さなガーベラです。用意して行った花鋏でチョキン。
義母の部屋は3階です。エレベーターのドアが開くとなんとそこに義母が立っていました。お茶の魔法瓶を食堂に忘れたそうです。義母の落ち着いた顔を見てホッと安心します。義母は私に手にある一本のガーベラを見て「また咲いてた?」ガーベラを植えた覚えはないそうです。
ガーベラを花瓶に挿して、手早く必要なものはないか確認して、冷蔵庫のドアは開けずに帰って来ました。冷蔵庫のドアを開けるのには勇気がいります。実の親ならさっさと開けて賞味期限が切れたものは捨てることができるでしょうに。
長居をせずに「また来るね。」とドアを閉める時、真っ白な壁の部屋に赤いガーベラが笑っているように見えました。