曇、8度、60%
半月、お日様の差さなかった福岡から東京に向かったのは、先月の末でした。飛行機が着陸のために高度を下げ始めると、雲の下へ下へと向かいます。太平洋側は晴天です。機体の左には富士山が見えました。富士山を目にすると、日本を感じ、その日一日が上手く運びそうな気がします。
日本海に面した福岡から東京に移り住んだ時、この太平洋側の冬の晴天に心が晴れました。そして空気の澄んだ日には多摩川越しに富士山を見ることができました。子供の手を引いて東京にはいくつもある「富士見坂」の一つからその姿を見るのが好きでした。主人を駅に送る時のこともありました。スイミングに通う息子を送る時のこともありました。
この日の東京で向かう先は「渋谷」です。スクランブルの人の多さは50年前も大変な数でしたが、日曜日の午後、 人の波でした。「渋谷」はここ数年、新しいビルの建設が進んでいます。地下道は私にとって迷路になりました。地上に出るとやっと向かう方向がわかります。「スペイン坂」の上が目指す建物です。「スペイン坂」なんて名前が付いたのも私が東京にいた頃です。道玄坂の一番奥にある「東急デパート」本店がこの二日後に店を閉めると知ったのは、この日の夕方のニュースでした。まだまだ変わっていく「渋谷」から昔住み慣れた町に住む息子宅へ向かいました。
翌日も晴天、羽田に向かうモノレールからも「富士山」が見て取れます。街は日に日に変化するのに、「富士山」は変わらぬ美しい姿で佇んでいます。
ほんの一日の小さな旅でした。落語も楽しみました。私の65年を振り返る旅でもありました。「富士山」ありがとう。